注目はブルージェイズ 充実の戦力補強で狙うは「世界一」

[ 2022年3月22日 09:00 ]

ブルージェイズ・菊池雄星(AP)
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 近々、フロリダ州のキャンプ地を回る予定の筆者が、同州にキャンプを張っているチームの中で最も注目しているのはブルージェイズだ。マリナーズからFAになった菊池雄星投手が3年総額3600万ドル(約42億8400万円)で加入したから、というだけではない。

 「ポストシーズンではなく、世界一というのをこのチームは狙っていると思います。そこの力になれるように頑張りたいと思います」。15日の入団会見で菊池が述べていた通り、メジャー屈指の激戦区として名高いア・リーグ東地区でもブルージェイズはトップかもしれない戦力を揃えていると評判だからだ。

 昨季、この地区からはレイズ、ヤンキース、レッドソックスという3チームがポストシーズンに進出。ブルージェイズも91勝を挙げながら、3位のレッドソックスにわずか1ゲーム差でシーズン最終日にプレーオフを逃した。

 雪辱に燃えるチームは、オフの間に効果的に選手を獲得していった。昨年のア・リーグMVP投票で大谷翔平(エンゼルス)に次ぐ2位に入ったウラジーミル・ゲレロを軸に、ボ・ビシェット、テオスカー・ヘルナンデス、ジョージ・スプリンガーといったビッグネームがそろった打線には、通算111本塁打で守備もいいマット・チャプマン三塁手が加入。ホセ・ベリオス、柳賢振(リュヒョンジン)、アレック・マノアが中心になる先発投手陣にも、ケビン・ガウスマン、菊池が加わって万全だ。

 昨季45本塁打のマーカス・セミエン、同じく昨季サイ・ヤング賞を獲得したロビー・レイらが抜けているから、前述した選手たちの獲得は「補強」というよりも「穴埋め」なのかもしれない。それでも多くの主力選手がまだ成長途上だけに、チーム全体が向上する可能性は十分ある。現地での評判は上々で、20日には老舗のニューヨーク・タイムズが「ブルージェイズはワールドシリーズを視界に捉えている」というタイトルの特集記事を展開した。

 「スーパースターのチームメートたちが、すごくこのチームに誇りを持っている。そこが印象的でした」。入団交渉時、ブルージェイズから受け取った勧誘のビデオメッセージについて問われた際、菊池が残していたそんな言葉も理解できる。

 昨年9~10月、31試合中22勝と猛烈な勢いで追い上げていたころのブルージェイズを取材した際、チーム全体から上昇気流のエネルギーが湧き出ているように感じられた。あの勢いと熱気を保っていれば、今季のブルージェイズは面白くなる。順調なら今後の数年間、鋼の強さを保つようなチームに成長していっても不思議はない。新たなパワーハウスが誕生しようとしているのか、フロリダ州ダンイーデンのキャンプ地に漂っているのであろう、ポジティブな空気を感じるのが今から楽しみだ。(記者コラム・杉浦 大介通信員)

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2022年3月22日のニュース