木更津総合・越井、鎮魂166球完投 5日に死去した祖父にささぐ熱投&絶叫がサヨナラ発進呼んだ

[ 2022年3月22日 05:30 ]

第94回選抜高校野球大会第3日第1試合・1回戦   木更津総合2―1山梨学院 ( 2022年3月21日    甲子園 )

<木更津総合・山梨学院>13回2死一、二塁、二ゴロ併殺でピンチを切り抜け、雄叫びを上げる木更津総合・越井(撮影・北條 貴史)
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 木更津総合(千葉)が今大会1回戦で唯一の同地区(関東)対決となった山梨学院との接戦に勝利。春夏通じて初となる2日連続のタイブレーク突入となった延長13回にサヨナラ四球で終止符を打った。エースの越井颯一郎投手(3年)は166球を投じて1失点完投。1月の大会出場決定時に涙を流して喜んでくれた祖父・芳夫さんが今月5日に89歳で死去したばかりの右腕が、天国に雄姿を届けた。

 きっと、見守ってくれている。延長13回1死一、二塁。越井は外角に制球させた直球で二ゴロ併殺に仕留めた。無死一、二塁から始まったタイブレーク。無失点に抑え感情が爆発した。仲間と体をぶつけ合い、青空に向け「ヨッシャー!」と叫んだ。何度も、何度も…。その声は天国まで届いたはずだ。

 「凄く気合が入りました。エースとして絶対に投げきって、(13回の攻撃に向け)流れをつくってあげようと思いました」

 エースの思いに打線も応え、直後の攻撃で1死満塁から押し出し四球でサヨナラ勝ち。越井は13回までに166球を投じ6安打1失点で完投した。山梨学院・榎谷礼央(3年)とのプロ注目のエース右腕対決にも勝利。球数が140球を超えた10回にも140キロ台を計測するなど、そのスタミナは無尽蔵だった。

 センバツ開幕を控えた今月5日。高校野球の大ファンだった祖父・芳夫さんが89歳で死去した。1月にセンバツ出場を決めた際は病院のベッドで孫の名が載った新聞を何度も読み返し、そのたびに喜びの涙を流していたという。だが最後の別れを伝える場でもある葬儀には参列しなかった。コロナ下で大会直前のチームに迷惑を掛ける可能性を減らすため、多くの人間と接する機会を避けた。つらい決断。悲しみは増したが、父・貴之さん(49)から「今は大事な時期。きっと、おじいちゃんも許してくれる」と励まされた。強い決意を胸に立った聖地のマウンド。延長が何回まで続こうとも、誰にも譲る気はなかった。

 昨夏の悪夢も払拭(ふっしょく)した。千葉大会決勝で専大松戸に同じタイブレークの13回に衝撃のサヨナラ満塁弾を浴びて敗退。越井を中心とした一丸の勝利に五島卓道監督は「こういう展開になればなるほど彼(越井)に託すのは決めていた」と言った。

 三塁側のアルプス席で見守った父・貴之さんにとっても甲子園は夢だった。高校球児で同じ右腕だったが、右肩を故障し1年生で無念の引退。父は「小さい頃から“グラウンドで泣くな!”と言ってきたのに…今日は私がグッときてしまいました」と目を潤ませた。

 父から夢を引き継ぎ、亡き祖父へ最高の贈り物を届けた孝行息子。「親子3代」の思いを胸に、頂点を狙う。(柳内 遼平)

 ◇越井 颯一郎(こしい・そういちろう)2004年(平16)7月8日生まれ、千葉市出身の17歳。小1から宮野木ビーバーズで野球を始め緑が丘中では千葉北シニアでプレー。木更津総合では1年秋からベンチ入りし、2年秋から背番号1。50メートル走6秒5。遠投110メートル。憧れの選手は元阪神・藤川球児。1メートル78、75キロ。右投げ右打ち。

 《昨夏は県決勝でタイブレークもサヨナラ敗退》▽木更津総合の21年夏の千葉県大会決勝 同年春の関東大会を制した専大松戸と対戦。延長12回を終えて6―6で、大会規定により13回からは無死一、二塁からスタートするタイブレークに突入。13回表の攻撃が無得点に終わり、その裏の守備で無死満塁とされ、1番・吉岡道泰に右翼へのサヨナラ満塁弾を浴びた。越井は7回から救援し、1回2/3を投げて無失点に抑えた。

 《春初のタイブレーク、サヨナラ決着》木更津総合がタイブレークの延長13回にサヨナラ勝ちし初戦を突破した。センバツのタイブレークは21年の常総学院9―5敦賀気比、前日20日の近江6―2長崎日大(ともに延長13回)に続き3度目だが、サヨナラでの決着は初めてとなった。なお、夏は3度タイブレークがあり、18年に済美、19年に星稜がサヨナラ勝ちしている。

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