ソフト・NPBで2度目支配下の藤井皓哉「山陽魂」の赤色グラブでまた這い上がる

[ 2022年3月22日 22:23 ]

おかやま山陽・堤尚彦監督(左)と藤井
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 「コウヤ」は赤色グラブで、まずは這い上がった。ソフトバンクに今季育成入団した藤井皓哉(こうや)投手(25)が22日、約4カ月後に2度目の支配下選手登録を勝ち取った。会見場で右腕は「両親、高校の監督、高知ファイティングドッグスの監督、皆さんが喜んでくれた」と、あふれんばかりの笑顔を振りまいていた。

 おかやま山陽高を卒業後の14年ドラフト4位で広島入団も、20年に戦力外通告を受けた。合同トライアウト受検後の21年は四国独立リーグの高知でプレー。同5月11日のソフトバンク3軍との定期交流戦で10三振を奪い、ノーヒットノーランで完封。育成契約の打診を受けて即決し入団。12月から2度目のNPBへの挑戦権を得た。

 新天地・福岡に乗り込む前の今年1月7日。母校で調整を続けた藤井は恩師の堤尚彦監督(50)からプレゼントをもらった。「這い上がれ! 山陽魂」と刺しゅうされた赤色の新グラブ。岡山県産のメーカー「ロマネクロウ」の「メイド・イン・岡山」の一品は、特製の貯金箱から小銭を出して払った。「皓哉応援団」みんなの思いが、込められていた。

 「大学で野球を続けているOBや現部員、指導者、職員室にいる教諭たちで、100円から500円ずつカンパし合って買ったんです。コウヤからつながった縁で今がある。みんなが応援しているという思いだけでも伝えたくて。とにかく、出し切って来てくれとの思いでしたね」

 藤井が卒業した後に入部した部員が17年夏と18年春に甲子園出場を果たした。06年の堤監督就任時に入って来た部員は3人だけ。藤井のような選手になりたいとの思いで部員は、毎年100人を超えるようになった。

 藤井は粋な思いに、冷静に淡々と赤色グラブで応え続けた。宮崎春季キャンプ中の2月16日の紅白戦登板からB組(2軍)からA組(1軍)に乗り込んだ。いきなり中村晃を空振り三振、柳町、井上を見逃し三振に斬った。1軍の練習試合1試合とオープン戦5試合、計6試合に中継ぎ登板し計8回を6安打4失点15三振。藤本監督は、オープン戦の途中で「もう、大丈夫です」と申し分ないアピールに、うなっていた。

 18日のペイペイドームでの古巣・広島戦でも1回零封。「赤いユニホームを見ると、いつも以上に力が入ってしまいました」と振り返るが、自身も当然、赤色グラブだった。

 これで3ケタだった背番「157」は2ケタの「48」に変更された。中継ぎとして開幕1軍も内定している。「嬉しい気持ちもありますがゴールではなく、ここからスタート。もう1度、気を引き締めて頑張ろうという思いです」。藤井は謙虚だが堤監督は違った。兵庫県生まれの東京育ちだが、住み慣れた岡山推しを要求した。

 「おとなしくて真面目で几帳面で裏も表も嘘もない、いい男ですが次に勝ったときは“でーれー(とても)嬉しい”“ぼっけえ(とても)嬉しい”とかヒーローインタビューで言ってくれんかなー」

 広島に在籍した6年間で14試合を投げて1勝0敗。狙うは、18年6月6日の日本ハム戦でのプロ初勝利以来の2勝目だ。おかやま山陽高校の思いも背負って、藤井のNPB挑戦第2章は幕を開ける。

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