元NPB審判員記者に焼き付いた甲斐拓也の「勝負師の目」

[ 2021年8月4日 05:45 ]

<東京五輪 野球 準々決勝 日本・米国>10回1死二、三塁、甲斐は右越えにサヨナラ打を放つ(撮影・北條 貴史)
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 侍ジャパンは2日、東京五輪決勝トーナメント準々決勝で米国を延長戦の末、7―6で下した。同点で突入したタイブレークの延長10回1死二、三塁。甲斐拓也捕手が右越えにサヨナラ打を放った。

 記者は東京ドームで行われた高校野球・東西東京大会決勝の取材後に帰宅。3時間53分のロングゲームとなった侍ジャパンの試合をテレビ観戦。甲斐の打席で懐かしい気持ちになった。

 今季の打率は・237、通算打率は・232だけに、スクイズも考えられた場面。だが、記者は絶対にヒッティングと信じていた。甲斐のキッと鋭い目が「打つ」と言っていたように感じたからだ。甲斐が育成選手でプロ入りした当初から変わらない目だった。

 甲斐は10年の育成ドラフト6位でソフトバンクに入団。記者は元NPB審判員で、10年度の採用で関西地区(愛知~福岡)の育成審判員として採用された。今では恐れ多くて言えないが、同じウエスタン・リーグのグラウンドで1軍の舞台を夢見る同期のような存在と、勝手に思っていた。

 ファームで鍛えていた頃の甲斐はギラギラしていた。捕手は、試合中にプレーを中断して投手と話し合いができる「タイム」の回数が3回までと定められている。だが、甲斐はその制限を超えて投手と話し合おうとするケースが何試合もあった。規則を守らせることが審判員の職務。「3度の回数を守ってくれ」と注意をする。そんな時、甲斐は何も言わず、キッとした目でこちらを見返してくる。2軍戦を調整と割り切る選手もいる中、勝負にこだわり、懸命に投手をもり立てていたからこその「4度目」だった。

 試合後に稲葉監督は「打っていいよ、と伝えた。選手たちがよくやってくれた」と振り返った。ボール先行などカウントが有利になれば、作戦も変わったかもしれない。初球でヒーローとなった姿に、3軍、2軍、1軍の競争を勝ち抜いてきた甲斐の勝負強さを感じた。(記者コラム・柳内 遼平)

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