【内田雅也の追球】分水嶺で流れを呼んだ阪神 大ヒーロー・大山の陰で光った殊勲者たち

[ 2020年9月19日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神8-4中日 ( 2020年9月18日    ナゴヤドーム )

<中・神(13)>初回2死一、二塁、マウンドに足を運び、ガルシア(右)に声をかける坂本(撮影・北條 貴史)
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 阪神・大山悠輔は大がいくつも必要なヒーローだった。20号逆転満塁弾はもちろん、1点返された直後の21号2ランも価値がある。

 そして最後まで三塁手として守り通した。守備固めで一塁に回ったり、途中交代したりしていたが、この夜は最後までいた。打球は珍しく1本も飛んで来なかったが、昨季三塁手リーグ最多20失策の守備も今季は5失策と安定している。

 掛布雅之は三塁手に定着したころ、コーチで後に監督を務める安藤統男から「最後まで試合に出る選手であれ」と指摘された。『巨人―阪神論』(角川書店)で江川卓と対談し「指導者との出会いに恵まれた」として安藤の話をあげている。

 「4打席立っても27個目のアウトをとる時にグラウンドにいないとレギュラーじゃない。守る野球というものを大切に考えないと野球選手はダメだよ」

 掛布は「この考えは吉田さん(吉田義男)とも共通」と話している。ノックで下半身が鍛えられ、それが打撃にも生きたそうだ。

 大山には掛布以来、待望久しい大砲三塁手への期待がこもる。

 この夜は、阪神にとってペナントレースの流れを左右する分水嶺(れい)と言える一戦だった。先の巨人3連戦で負け越した。かつては巨人戦の後のカードで気が抜けたような試合をする悪習があったのも確かだ。

 また、正捕手の梅野隆太郎が負傷で欠けた。ズルズル後退するかもしれない不安を一掃するかのような勝利だった。

 むろん大山がヒーローだが、隠れた殊勲者が多い。梅野の穴を埋めた坂本誠志郎のリードをあげたい。先発オネルキ・ガルシアは明らかに乱調だった。四球のなかでも「3禁」と言える「2死無走者」「投手」「回の先頭」でそれぞれ与え、すべて失点していた。

 そんな状態でも失点は最少の1点ずつにとどめたのは辛抱強いリードの功労だろう。2、4回裏の得点圏で3番ソイロ・アルモンテを打ちとった配球が光る。6投手をリードしての勝利だった。

 <坂本誠志郎は「考える野球」ができる選手だった>と母校・履正社監督の岡田龍生が著書『教えすぎない教え』(竹書房)に書いている。<私が言う前に、選手たちが気づいたことを指摘し合う。望む形を坂本は見事に具現化してくれていた>。

 野村克也がよく話していた「捕手はグラウンドの監督」の素養があると言えるだろう。

 6回表、大山逆転弾のお膳立てをしたのは陽川尚将と糸原健斗の連打だった。ともに追い込まれながら、低め変化球に食らいついた。2―5回と無安打だった打線に反撃の空気を呼んだ。

 無失策の守備陣だが、派手な美技はなかった。ただ、たとえば左翼手ジェリー・サンズは6回裏にクッションボール処理と返球、7回裏に左中間飛球を好捕している。大山で触れたように、打つだけの選手ではない。サンズもまた最後まで左翼を守り、勝利の輪に加わったのだった。

 先に分水嶺と書いたが、どうやら、水はいい流れで阪神に来ている。この流れに乗り、大型連勝で巨人を追いたい。=敬称略=(編集委員)

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