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ニジマスが架ける笑顔の虹 釣った魚を子供食堂へ“寄付”

[ 2022年9月29日 07:22 ]

“寄付”する魚を釣り上げたメンバーと(中央が筆者、花村さんは右端)
Photo By スポニチ

 【釣り女子アナの伝えたいこと】釣りが大好きなアナウンサー・大塚ひとみが、管理釣り場で釣れた魚を子供たちに届ける活動に参加。そこから見えたものとは…。体験取材の模様は動画でもお楽しみいただけます。

 今月上旬。神奈川県南足柄市の管理釣り場で行われた釣り大会を訪れた。会場で「“寄付”をお願いします」という声が聞こえてきた。呼びかけていたのは、さいたま市内で事務所を構える行政書士・花村秋洋さん(43)。約2年前から釣った魚を子供食堂に届ける団体「トライアングルレインボー」で活動をしている。この日は3人の仲間とともにニジマス90匹を集めるのが目標だ。

 釣り人たちはさまざまな思いで釣果を“寄付”していた。「自分の趣味が役に立てるなら」「魚離れと聞くからぜひ食べてほしい」

 メンバーも竿を握り、筆者も一緒に釣り上げた。この日集まったのはニジマスなど100匹以上。花村さんは「この数に驚きません。みんな釣りがうまいのが分かっているので。管理釣り場では数を競っているのでリリースが基本。でも持ち帰ることもできるので、逃がすなら子供食堂へ届けられるんじゃないかと思ったんです」と話した。

 活動は魚を集めるだけではない。子供食堂の要望に応じてさばく。「大変ですが、おいしく食べてもらうために頑張ります」とメンバー。炎天下、汗をかきながら約1時間かけてさばき終えた。

 取りに来た地元の子供食堂は「地元にはおいしい魚がいるってことを知ってもらえるよ」と笑顔で受け取った。

 しかしメンバーができるのはここまで。コロナの影響でお弁当にしている食堂が多かったり、メンバー全員が仕事をしたりしているため、いまだ子供たちが食べる姿を見届けることはできていない。「本当は驚く顔を見てみたい」「私たちの思いを子供食堂に託します」と語る。

 そこで後日、筆者は団体が魚を届けている子供食堂におじゃました。代表として花村さんと訪れたのは、「みな風こども食堂」(さいたま市)。活動当初からの付き合いが長い食堂だ。代表の山田ちづ子さん(73)。貧困やコロナの影響で困っている家庭を助けたいと約2年前から始めた。

 この日のメニューは、届けた魚のフライ。バイキング形式で親子30人が参加する。バチバチとキツネ色に変わったフライの香りが厨房(ちゅうぼう)いっぱいに広がり、約80個がカラッと揚がった。

 ボランティアの人は「“昨日釣った魚なんだよ”と言って食べさせたい」と話す。いよいよ昼食。一人のお母さんに「釣ったばかりの魚なんです」と言うと、「え!?」と目を見開く。そしてサクっと音を立てながら食べた子供たちは「おいしい。ふわふわ」「ニジマス食べたの初めて」と食堂が笑顔に包まれた。

 80個を見事に完食。「釣ったものを子供たちに届けたいという彼の思いは本当にありがたい。子供たちには“魚が大好きな人たちが釣ってきたんだよ”ということを伝えていきたい」と山田さん。

 花村さんは「初めて食べる姿を見られてうれしかった。今後の活力にしていきたい」と意気込んだ。釣り人たちの思いは子供食堂を通して多くの子供に伝わっていた。

 ◇大塚 ひとみ(おおつか・ひとみ)1993年(平5)生まれ。千葉県出身。フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局、栃木放送、ウェザーニューズを経てフリーに。釣り歴はカサゴなど小物釣りを中心に20年。

 ▼取材協力 「トライアングルレインボー」=問い合わせはメールで。アドレス別掲載。さいたま市「みな風こども食堂」=(電)048(764)8850。 ◇トライアングルレインボー ha.jimusho@gmail.com

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