【筒井真理子 インタビュー後編】主演映画「波紋」 雨中のフラメンコ「思い届いたら」

[ 2023年5月23日 05:00 ]

5月15日に行われた「波紋」上映会で舞台あいさつを行った(左から)キムラ緑子、磯村勇斗、筒井真理子、木野花、荻上直子監督
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 筒井真理子主演の映画「波紋」(監督荻上直子)の封切りが5月26日に迫った。公開を前にスポニチ本紙が筒井に行ったインタビューの後編です。

 作品は現代社会の闇や不安、絶望をエンターテインメントに昇華させた1本。筒井が演じた主婦・須藤依子は心に負荷のかかる役だったが、共演者にはずいぶん助けられた。

 「(夫を演じた)光石研さん。日焼けして、汚い顔で現場に現れた。役者って、もちろん内面も作ってくるんですけど、疲れた感じというか、どういう皮膚をしているかといったものが大事なんです。バサバサの髪、着ている物…外見ばっちりでした。(姿を消していた)10年間、なんか、この人、荒れた生活していたんだろうなあ、みたいなことも見えて、凄くありがたかったです」

 パート仲間を演じた木野花(75)にも感謝の言葉を送る。筒井が鴻上尚史(64)主宰の劇団「第三舞台」に在籍していた早大時代から、演出家と女優という関係も含めて長い付き合いがある。

 「木野さんはある意味、恩人なんです。芝居で行き詰まっている時に背中を押してもらって、愛情ある厳しさで向き合ってくださった。この映画の中でも自分の撮影が終わった後も私の芝居にお付き合いしてくれて…。自分が映っている時よりも真剣にやってくださった。涙が出そうでした」

 コロナ禍の大変な時期に撮影現場に妊娠中の身を運んだ平岩紙(43)にも「しっかり宗教の人になっていた」と感心しきり。スーパーの店長を演じた黒田大輔(45)にも背中を押された。「柄本明さん(が演じる客)のクレームは何回目くらいなのかな?と荻上監督に問いかけてくれたんです。いつもこういうクレームをつける常連なのか。ひとつき前からなのか、それとも1年も前からなのか。それを聞いてくださって。素晴らしいなと思いました」

 宗教団体の教祖であるキムラ緑子(61)の怪しさも秀逸だった。「あなただけに」と折につけて特殊な水を勧める。「あの場面。あそこは大事なシーンだなと。一瞬、アレ、これって違わない?みたいな。信じてた物がガラガラと音を立てて崩れていく。その瞬間にメッキが剥がれたことに気づく。自分の芯(しん)、核が崩れていく、凄く大事なシーンでした」

 自分を解放させるクライマックスのフラメンコは圧巻。初心者だったが、シナリオの設定が「これから始める」から「昔やっていた」に変更になったことで焦りを覚えた。

 「大学の先輩がフラメンコをやっていたことを思い出し、電話して“教えて!”と」

 基礎を身につけるだろでふつうは3年かかるのに、それを2カ月で形にしてみせた。「指の動き、足の踏む向き、別々なんです。あのステップを踏む音は“私はここに居るよ”という意味がある。その叫びは依子とぴったりでした」

 雨の中、喪服姿での踊り。「ぬかるんでくるし、着物だから足が開かない。思うようにはいかなかったけれど、うまいことを見せる芝居じゃないので、と割り切った。最後、“オ~レ!”と言う時は自分で自分に“おめでとう”と言ってるような気持ち。その思いが見てくださる方に届いたらいいかなと思って。自分OK!って」

 雨中のフラメンコ。じわじわと広がる感動の波紋。思わず劇中の筒井に合わせて心の中でパルマ(手拍子)を打っていた。(佐藤 雅昭)

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