「silent」プロデューサー語る(下) 大反響の背景には「月9」のノウハウも

[ 2022年11月4日 10:00 ]

主人公の青羽紬を演じる川口春奈(フジテレビ提供)
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 川口春奈(27)主演で「泣ける」と話題のフジテレビドラマ「silent」(木曜後10・00)は近年では珍しい本格的なラブストーリーだ。

 川口演じる主人公の青羽紬(あおば・つむぎ)と、Snow Manの目黒蓮(25)演じる元恋人で耳の聞こえなくなった佐倉想(さくら・そう)との間で展開される恋物語。ドラマの放送中や放送後には、決まってネット上で大反響となっている。

 最近のドラマは医療や刑事、職業紹介といったジャンルが増え、恋愛ものであっても喜劇色の強いラブコメディがほとんど。そんな中で、村瀬健プロデューサーは「実はみんな本格的なラブストーリーを見たいんじゃないか?」と感じていたという。

 その理由を「全話合わせて何時間もかけて、人の心が変わっていくさまを描くことができるのが連続ドラマ。その特性を一番生かせるのはやっぱりラブストーリーだと思いました」と明かした。

 ラブストーリーをやる上で強く意識したのは「2022年の実際の僕たちが生きている世界で起きている物語」と強調することだったと振り返る。そのため、スタジオではなくロケにこだわり、東京・渋谷のタワーレコードや小田急線沿いなど、視聴者になじみ深い“生活圏内”で撮っている。

 他にも、テレビドラマ内ではなかなか使えないというが、もはや日常生活で欠かせない「LINE」も本作には“登場”。耳なじみのあるスピッツの歌を劇中で流しているのも特徴的で、徹底的にリアルを追求した。これらのような強いこだわりで、視聴者に温度感を与える世界観が完成している。

 ネット上でもフィーバーが巻き起こっている。ツイッターでは放送初回から3週連続で「#silent」がトレンド世界1位を獲得した。リアルタイムだけでなく見逃し配信も絶好調。民放公式テレビ配信サービス「TVer」での第2話の見逃し配信の再生回数は、放送後1週間で489万回。第1話の443万回再生を上回り、他局のドラマを含めTVer史上最多記録を樹立した。

 反響の大きさに村瀬氏は「僕が一番びっくり」としつつも「少し狙った部分も…」とぽつりと漏らした。意識したのは「月9」だ。
 今作は木曜午後10時放送の「木10」。「大人が腰を据えて見る」というイメージを持っていた「木10」に、月曜午後9時放送の「月9」のノウハウを注入したと明かす。どういうことか。

 「月9」は91年放送の大ヒット作「東京ラブストーリー」などを輩出したフジテレビドラマの王道枠。村瀬氏は16年放送の「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」などで担当してきた経験から「恋愛ならば10代などの若い世代が背伸びして憧れる作品にするのが月9のポイント」と説明する。

 大人が見るしっとりとした「木10」に、若者が憧れる「月9」の要素を混ぜ込んだ。川口と目黒を起用したのも、2人には10~20代のファンが多いことが背景にある。こうして、幅広い世代の視聴者を取り込むことに成功して大ブームへとつながった。

 10日には第6話が放送される。村瀬氏は奈々(夏帆)、春尾先生(風間俊介)、律子(篠原涼子)らの役名を挙げ「6話からは、ここまであまり描かれていない人たちにもスポットが当たります」と見どころを語った。ドラマの制作を発表した当初は「紬と想のラブストーリーと、それを温かく見守るみんなを描く」と説明していたが、取材中には「“見守る”にもいろんな意味があります」と含みを持たせた。

 「silent」のタイトルとは真逆に、世間をにぎわせている今作。物語はいよいよ後半戦に差しかかる。最後の最後まで目が離せない。

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2022年11月4日のニュース