蝶花楼桃花 浅草演芸ホールで初トリ「エネルギーをバンバンぶつける」

[ 2022年7月15日 08:30 ]

浅草演芸ホールでの初トリへの意気込みを語った蝶花楼桃花                               
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【牧 元一の孤人焦点】今年3月に真打ちに昇進した落語家の蝶花楼桃花が今月21日から30日まで、東京・浅草演芸ホールの昼の部で主任(トリ)を務める。

 桃花は「寄席のトリを10日間も務めるというのはどんな世界なんだろう!?というワクワク感と、お客さんは来てくださるのだろうか?という心配があって、ゴチャゴチャの気持ちです」と笑う。

 真打ち昇進後4カ月での初トリは、落語協会が法人化された1977年以降、春風亭一之輔の5カ月を上回り、史上最速だ。

 浅草演芸ホールの席亭・松倉由幸氏は「真打ち披露の時に決めました。前座の頃から噺がしっかりしていたけれど、それから着実に力をつけて開花しました。安心して聞いていられるし、華があるし、お客さんもたくさん持っています。これなら任せられると思いました」と説明する。

 桃花は「『華がある』と言って頂けるのはうれしい。うちの師匠(春風亭小朝)には華があると思うけれど、華というものは技術で出せるものではありません。華を出すボタンが私のどこかについているのならば、押したい」と話す。

 2006年に小朝に入門。前座時代の「春風亭ぽっぽ」、二ツ目時代の「春風亭ぴっかり☆」から、真打ち昇進と同時に、小朝の命名で現在の名前に改めた。

 「ぴっかり☆は既に過去の名前の感じ。師匠から『君はお披露目の間に蝶花楼桃花になったよね』と言ってもらいました。これまで女性が継いだことのない亭号ですけど、とても字面がきれいで、自分の中にすんなりと入って来ます。姓名判断によれば、何かを成し遂げる名前らしいです」

 持ちネタは現在、古典が約8割、新作が約2割。男性落語家に比べまだまだ数少ない女性落語家としておよそ15年間努力を重ねてきた。

 「私が入門した頃は『女性の落語家がいるんですね?』と言われ、面と向かって『女性の落語は聞かない』と言われたこともあります。男性の社会に入って来ている感覚はあるので、女性が落語をやる違和感を少しでも取りたいと思っています。例えば落語には男性が言えば大丈夫だけれど女性が言うと生々しすぎる場面があります。そういう時は、何かに変えたりカットしたり、あえて言う時は思い切りギャグにしたりしています。でも、この10年で女性の落語家が増えた印象があって、私が10人目の女性真打ちなんですけど、今は後輩が30、40人います」

 真打ちとしてはまだ若年。これからの10年、20年で全盛期、円熟期を迎えることになる。

 「先輩方を見ていると、存在自体が芸になっている方が多い。高座に上がって『今日は暑いですね』と言っただけで成立するような空気感にあこがれます。まだ『おばあちゃん落語家』がいないので、目指すべきモデルがないんですけど、自分が歳を重ねた時、寄席に出て来るとお客さんがホッとするような、かわいらしいおばあちゃんになりたい」

 21日からの初トリは、そこに向けての第一歩。今後を占う意味で、ここで見せる芸への注目度は高い。

 「カラーがないこと、何でもできることが私の強みだと思っています。私のエネルギーをお客さんにバンバンぶつけるつもりです」

 見逃せない高座が続きそうだ。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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2022年7月15日のニュース