「鎌倉殿の13人」ハードル上げてなお神回 三谷脚本は予測不能!上総広常の手習い→祈願書にネット号泣

[ 2022年4月24日 10:30 ]

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第15話。読み書きの稽古に励み「これから三年のうちにやるべきこと」を書き残していた上総広常(佐藤浩市)(C)NHK
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 俳優の小栗旬(39)が主演を務めるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)は前回第15話(4月17日)、18年ぶりの大河出演となった俳優の佐藤浩市(61)が圧倒的な存在感を示してきた“坂東の巨頭”こと房総半島の豪族・上総広常が“非業の死”を遂げた。第7話(2月20日)から本格登場し、主人公・北条義時(小栗)の師匠的存在に。オンエア終了後、SNS上には悲しみの声があふれ返り「上総広常ロス」が瞬く間に広がった。放送前に小栗らが「神回」と予告した以上の展開。脚本・三谷幸喜氏(60)の筆が冴え渡っている。

 <※以下、ネタバレ有>

 大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。新都・鎌倉を舞台に、頼朝の13人の家臣団が激しいパワーゲームを繰り広げる。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は8作目にして大河初主演に挑む。

 上総広常は、佐藤が「新選組!」で演じた初代筆頭局長・芹沢鴨役を彷彿。窮地の頼朝に手を差し伸べ、頼朝のことを親しみを込めて「武衛(ぶえい=佐殿を上回る尊称)呼び」。上洛に備え、手習いに励むなど、べらんめえ口調にチャーミングさも兼ね備え、今作きっての“愛されキャラクター”となったが、陰謀に巻き込まれて退場した。

 オンエア前日(4月16日)には、佐藤が「土曜スタジオパーク」(土曜後1・55)にゲスト生出演。小栗らもVTR出演し「15話っていうのは本当にもう、みんな、出演者全員が認める神回。浩市さん演じます上総介が物凄く活躍する話でございます」(大泉洋)「1回、最終回を迎えるぐらい、すべての人の心をわしづかみにすると思うんですよ。もう騙されたと思って、かぶりつきで見ていただきたい」(山本耕史)「僕も台本を頂いた時、興奮しました。佐藤浩市の勇姿をお見逃しなく」(小栗)と猛烈アピールした。

 VTR明け、佐藤も「ハードル上げんなよ、ハードルを」と笑いを誘いながら「どのような運命が待っているのか。たぶん、トイレに立つことはできないと思います」と3人に続いて神回予告。「みんなが言うように、本当に見応えのある回になっていると思います。楽しみにしてください!」と熱弁した。

 視聴者からは毎週「神回」の声も上がるが、ハードルを上げてなお、過去回を塗り替える今作最大の衝撃に包まれた。

 第15話は「足固めの儀式」。源義経(菅田将暉)率いる一軍が迫っていると知った木曽義仲(青木崇高)は、後白河法皇(西田敏行)を捕らえて京に籠もる。一方、都ばかりに目を向ける源頼朝(大泉)に対し、御家人たちが失脚を企み、鎌倉は二分。義仲の嫡男・義高(市川染五郎)を旗頭とする反頼朝派には、上総広常(佐藤)も加わった。北条義時(小栗)は御家人たちの計画を潰すため、大江広元(栗原英雄)らと連携し…という展開。

 すべては広常を脅威に感じていた頼朝の謀略だった。広常粛清――。「最も頼りになる者は、最も恐ろしい」「敢えて謀反に加担させ、責めを負わせる。見事な策にございます」「明日、御家人たちを御所に集め、その席で、皆の前で斬り捨てるというのはいかがでしょう。見せしめにするなら、効き目は大きい方が」(広元)。頼朝に命じられた梶原景時(中村獅童)の刀が広常の身体を貫いた。その場は凍りつき、目の当たりにした御家人たちは動けない。頼朝は「今こそ天下草創の時。わしに逆らう者は何人も許さん。肝に銘じよ!」と怒声を上げた。

 そして、広常の館にあった鎧の中のから封書が見つかる。頼朝は「子どもの字か。読めん」。義時は広常が読み書きの稽古に励んでいたと告げ、代わりに読み上げた。「これから三年のうちにやるべきこと。明神様のための田んぼをつくる。社もつくる。流鏑馬を幾度もやる。これすべて…鎌倉殿の大願成就と、東国の太平のため」――。頼朝はハッと何かに気づいたような表情。義時から渡された文に再度、目を通したが、丸めた。立ち上がり「あれは謀反人じゃ」と、その場を後にした。

 義時と夫婦になった八重は男児を出産。「義時に長男が誕生したのは、この年、寿永二年のこと。のちの北条泰時」(語り・長澤まさみ)。抱いた赤子の泣き声を聞き、義時の表情が曇ったかに見えた。

 三谷氏が「これが原作のつもりで書いている」と語る史書「吾妻鏡」には、1180年(治承4年)の「以仁王の乱」を始まりとする鎌倉幕府の歴史が記されている。第15話に盛り込まれた主なエピソードが番組公式ツイッターで紹介された。

 「寿永3年(1184)1月1日条 昨年の冬、上総広常の事件があり、源頼朝の暮らす大倉御所がけがれてしまったと記されています。ちなみに『愚管抄』によると、12月22日、広常は梶原景時の不意打ちにより誅殺されたそうです」

 「寿永3年(1184)1月8日条 上総広常は生前、上総国一宮<現在の玉前(たまさき)神社>に甲(よろい)一領を奉納していました。甲の前胴と後胴を結ぶ紐には、1通の祈願書が結びつけられていたそうです」

 「寿永3年(1184)1月17日条 上総広常の祈願書には、3カ年の間に『神田20町を寄進する事』『先例に沿って社殿を造営する事』『1万回矢を射る流鏑馬(やぶさめ)を挙行する事』という願が立てられていました。これは、源頼朝の祈願の成就と東国の泰平を願ってのものでした」

 「寿永3年(1184)1月17日条 上総広常の祈願書のことを知った源頼朝は、広常を誅殺したことを後悔したようです」

 広常の「祈願書」につながる伏線として、三谷氏が「手習いシーン」を創出した。

 第12話(3月27日)「亀の前事件」。政子(小池栄子)に館を壊される「後妻(うわなり)打ち」に遭った頼朝の愛人・亀(江口のりこ)を匿う広常は「いつまで預かってりゃいいんだよ。俺に色目使ってきやがった。ああいう女は好かねぇ」と義時にボヤいた。そして、散乱した字の書き損じを義時に見られ「若い頃から戦ばかりでな。まともに文筆は学ばなかった。京へ行って、公家どもに馬鹿にされたくねぇだろ。だから、今のうちに稽古してんだよ。人に言ったら殺す」と読み書きの稽古中だと打ち明けた。

 広常の未来への思いが知れ、義時と広常の絆が強まった分、悲しみが深く心に刻まれ、視聴者は涙。安達盛長役の俳優・野添義弘も「それにしても上総殿、無念でなりません。鎧の中から見つかった祈願書といい、文の読み書きの努力といい、義時殿の赤子の泣き声が武衛と聞こえたり、切なすぎる神回の15話でした」とツイートしたほど。SNS上には「日本一哀しいやることリスト」「上総広常、一番好きだった…手紙が出てきた時、字を一生懸命練習したり、うれしそうに“武衛”と呼んでいた彼の姿が浮かんで号泣してしまった」「文筆が苦手な上総が退場し、読み書きが苦手な武士でも読み易い御成敗式目を作った北条泰時が登場する神回」「上総殿の鎧から見つかった願文を小四郎が代わりに読んで、それでも『あれは謀反人じゃ』と言う頼朝の自分に言い聞かせる感じは後から沁みてきた。頼朝の目指した未来って何なんだろうな…それを見届けねばならぬ」「字を稽古していたくだり。上総殿のお人柄を表すために入れたエピソードだと思ってたけど、まさかここへつながるの?戦慄した…だとしたら、とんでもない脚本だわ(褒めてます)」などの声が続出した。

 最初に第15話の台本を読んだ時の心境について、小栗は「震えました。と同時に、早くこのシーンを演じてみたいと思いました」。史実としては広常の最期を認識し「双六の最中に梶原景時に斬られるのかなとは思っていましたが、まさか御家人みんなが見届けることになるとは。本当に驚きました」と述懐。番組公式ツイッターに公開された佐藤の「かまコメ(撮影直前・直後の音声コメント)」によると「最初に、本筋とは何か全然関係のないところで、広常のキャラクターが見えるようなシーンがあったらいいね、なんてことを演出陣と話していました。(手習いは)それを三谷幸喜さんが聞いて、できたシーンだったんです」。史実に沿いながら、今作のキャッチコピー通り、まさに予測不能な三谷脚本。今夜(4月24日)の第16話は義経VS義仲の「宇治川の戦い」(1184年、寿永3年)、そして第18話(5月8日)は源平合戦のクライマックス「壇ノ浦の戦い」(1185年、寿永4年)が描かれる。

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2022年4月24日のニュース