Adoインタビュー 音楽シーン席巻に「ふわふわ」、おちゃめな19歳歌姫 ディズニーに学んだ感情表現

[ 2021年12月28日 06:30 ]

新聞社では初めてとなるスポニチ本紙のインタビューに応じたAdoのイメージイラスト
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 今年最もブレークした歌手のAdo(19)が新聞では初めてスポニチ本紙のインタビューに応じた。ヒット曲「うっせぇわ」が新語・流行語大賞のトップテンに入る快挙。今年の音楽シーンを席巻している現状を「ふわふわしています」と受け止めきれないでいる。顔を明かさずに活動し、ベールに包まれた歌姫。取材ではおちゃめでチャーミングな“素顔”をのぞかせた。(飯尾 史彦)

 パソコンでのウェブ会議システムを使ったインタビュー。システムに入ってくると、まずは「お疲れさまです。Adoです」と自己紹介した。落ち着いた感じの低音ボイス。「今年一年を漢字一文字で」と聞くと「う~ん」と悩んでから「時」と答えた。

 「足りなかったです。時が。あり得ないことがたくさん起こったせいで、そのままふわふわした感じで年末を迎えてしまいました。もっと時間があったら、いろんなことをかみ砕けたのかなと思います」

 昨年10月配信のメジャーデビュー曲「うっせぇわ」はサブスクリプション(定額聴き放題)の総再生回数が2億回を突破。今年配信の「踊」も「ギラギラ」も1億回を超えた。テレビ朝日の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の主題歌担当にも抜てきされ、極め付きは新語・流行語大賞のトップ10入り。想像もしていなかったシンデレラストーリーに「もう現実を受け止めることを諦めかけています」と吐露する。

 落ち着いた語り口調だが、気持ちを伝える時には高い声も交え、抑揚をつけて話すのが印象的。そして、よく笑う。映像をオフにしているため表情はうかがい知れないが、感情がよく伝わってくる。

 「私自身、感情のアップダウンが激しいんです。落ち込んだら落ちるとこまで落ちて一日がつぶれることなんてザラ。でも次の日には“うそ~、あのボカロPさんが曲を(ネット上に)あげてるぅ”ってうれしくて興奮でパニックになったりします」

 ボカロPとは、音声合成ソフト「ボーカロイド」を使って音楽作りをしているプロデューサーの総称。Adoは「歌い手」として、ボカロPが作った楽曲を歌う活動をしている。

 提供された歌をいかに感情を込めて歌えるか。「うっせぇわ」のサビの歌い出し「はぁぁぁぁ?」という怒りの表現も作者の指示ではなく、全て自分自身で考えた。感受性の豊かさが表現力に生きている。

 「大好きなディズニー作品の影響も大きいと思います。悲しいところは悲しく、怒る時は怒っているように歌う。歌詞が言いたいことをそのまま歌声に合わせています」

 同じ歌い手として影響を受けたのは、今年のNHK紅白歌合戦に初出場するまふまふ(30)やそらる(33)、りぶ(31)ら。小学校高学年の時、顔を出さずに活動する歌い手の文化に「ミステリアスで格好いいな」と興味を持った。

 「根暗で優柔不断で自信もなくてパッとしない。コンプレックスだらけの私だけど、大好きなボカロを歌って投稿して聴いてもらえたら自分のことを好きになれるかもしれないと思って活動を始めました」

 来年1月26日にはアルバム「狂言」を発売し、CDデビューを果たす。顔を知られていないことを逆手に「店に行ってレジに並ぼうかな。“私、ファンなんですぅ”とか言って」と妄想中。来年4月4日には東京・台場のZepp DiverCityで初ライブの開催も決まっている。ステージの詳細は未定だが「ちゃんと人間・Adoがいるんだと皆さんに分かってもらえるようなライブにしたい」と意気込む。

 その声色を自在に操り、多くの人の心を揺さぶっている19歳。成人を迎える来年はCDとライブという“リアル攻勢”で聴き手をファンへと変えていく一年となりそうだ。

 ◇Ado(アド)2002年(平14)10月24日生まれ、東京都出身の19歳。小学1年の時に父親のパソコンでボカロの歌を聴き始め、17年にニコニコ動画に歌唱を投稿して歌い手としての活動を開始。メジャーデビュー曲「うっせぇわ」はミュージックビデオとサブスクの合計総再生回数が4億回を突破。歌手名は狂言の「アド(脇役)」が由来。

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