大沢たかお 攻めるしかない人生、ファンのためもっと…決して演技に満足せず

[ 2021年8月15日 09:00 ]

大沢たかお
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 【俺の顔】俳優の大沢たかお(53)はいまだに演じることの楽しさ、充実感を見いだしていないという。それならばなぜ、20年以上も第一線でキャリアを築いてこられたのか。答えは「作品を見た人が喜んでくれたり、面白かったと言ってくれるとうれしい。それだけです」と明解だ。そのためにも「攻めるしかない人生」を自任し、常に高みを追求し続けている。(鈴木 元)

 大学時代にスカウトされモデルの世界に。「MEN‘S NON―NO」などで人気を得たが、初めて臨んだパリコレで厳しい現実に直面する。

 「オーディションを50くらい受けて49落ちるみたいな感じでした。周りは1メートル90くらいのイケメンしかいなくて、僕なんか体もできていないガキんちょ。それなりに売れていたので自信満々で行ったんですけれど、勘違いでしたね。初めて世界と日本の差を痛感しました」

 子供の頃から世界で戦いたいという夢があったからこそ、徐々にモデルへの熱が冷めてしまう。1年ほど仕事をしなかったが、当時のマネジャーから俳優への転身を勧められ、フジテレビの亀山千広プロデューサー(現BSフジ社長)にあいさつに行ったことで道が開けた。

 「なんか面白いねと言われて、やってみてと渡されたのが『君といた夏』の台本だったんです。だから考える余裕もないし、もちろん演技もやったことがない。そんな始まりでした」

 思いがけないデビューだったが、95年の日本テレビ「星の金貨」、映画「ゲレンデがとけるほど恋したい。」で一気にブレーク。しかし、いくら経験を積んでも自身の演技に満足することはない。

 「撮影はつらいですよ。毎日が大学入学共通テストを受けているようで、なんでうまくいかなかったんだ、なんでこんなレベルなんだと思って寝られない。いつまでこれをやっているのかなって。撮影がない時期は、超幸せですから」

 自嘲気味に笑うが、偽らざる本音だろう。それでも作品を待っているファンの存在があるからこそ、自らを鼓舞しカメラの前に立ち続けている。

 「例えば僕の作品を見て、いじめられていたけれど頑張って学校に行こうと思いますと言ってもらえると簡単には手を抜けない。自分の評価はどうでもいい。撮影はどれも大変ですが、そのせめぎ合いをずっとしている感じで、そういう意味では攻めるしかない人生になっています」

 前進あるのみの姿勢が、大きなチャンスも呼び寄せる。15年に主演の渡辺謙(61)に誘われ舞台「王様と私」をニューヨークで観劇し、翌日、リハーサルに参加する機会を得た。帰国後に正式にオファーが来たが、NHK大河ドラマ「花燃ゆ」への出演が決まっていたため断念。しかし3年後、英国公演に再び呼ばれ、クララホムとシャム王の2役を獲得した。

 「俳優としての世界の壁もとてつもなく難易度が高いですよ。リハーサル初日から本番のレベルでやらなければいけない。もちろん台本を見てはいけないし、セリフの間違いも許されない。本番中も毎日、間違えた単語や子音が弱かった発音などのダメ出しがメールで届く。それを次の公演までに直さなければいけないんです。メンタルは元々強いんですけれど、鍛えられて本当に何でもOKになりました」

 その言葉通り、ここ数年も「AI崩壊」で激しいアクションに挑み「キングダム」では筋力トレーニングと食事管理で15キロ近く増量し中国最強の大将軍・王騎役で強烈なインパクトを与えるなど、ストイックに自らを磨き続けている。その先に見据えるものはなんだろうか。

 「自分の中で計算した通りのできる範囲でやったものは全然ダメですね。エネルギーが足りないんですよ。それでは人は感動しない。これからもただいい映画、面白い映画をやりたいということしかないですね」

 次なる攻めの一手に、期待は膨らむばかりだ。

 ≪観客目線で役づくり、映画「妖怪大戦争…」≫大沢が出演する映画「妖怪大戦争 ガーディアンズ」(監督三池崇史)が公開中だ。人間を憎む狸(たぬき)の大妖怪・隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)役で、オファーはデッサン画1枚のみ。特殊メークに3時間を要したが「最初のイメージは僕だと分からなければいい。その方がお客さんは楽しいと思ったんです」と、ここでも観客目線を強調する。八百八狸を従えバイクで疾走する奇想天外な設定にも「僕も見てウケるな、こいつみたいな感じで見て笑いましたよ」。いかなる活躍を見せているか、注目だ。

 ◇大沢 たかお(おおさわ・たかお)1968年(昭43)3月11日生まれ、東京都出身の53歳。モデル活動を経て94年、フジテレビ「君といた夏」で俳優デビュー。04年の映画「解夏」で日本アカデミー賞優秀主演男優賞、06年「地下鉄(メトロ)に乗って」で同優秀助演男優賞を受賞。09年、TBSの主演ドラマ「JIN―仁」で橋田賞に輝いた。

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