コロナ禍で世界中に閉塞感 審査員も娯楽を求めていた

[ 2020年9月14日 05:30 ]

ベネチア国際映画祭 黒沢清監督が銀獅子賞

ベネチア国際映画祭で黒沢清監督が監督賞を受賞した「スパイの妻」の場面写真
Photo By 提供写真

 【記者の目】今年のベネチアのコンペには18本が選出された。黒沢監督自身は受賞理由について、推測とした上で「戦争状態にある設定の物語に、サスペンスやメロドラマなど娯楽的な構造の上に組み上げられた日本映画は珍しかったのでは」と分析した。

 ベネチアやカンヌなどは、作家性が強く社会的なテーマに沿った作品が受賞する傾向が強い。その中で、エンターテインメント性にも富んだ「スパイの妻」が主要な賞に輝いたことは大きな意味を持つ。

 コロナ禍で世界中に閉塞感が漂う中での開催。審査員の一人、独のクリスティアン・ベッツォルト監督は「独特のリズムと美しい映像がオペラのようで、伝統的な世界をとてもモダンなやり方で表現している」と高く評価。映画のテーマ自体は明るいものではないが、審査員の間でも娯楽を求めていた部分があったのだろう。ジャンルを問わず、常に「社会とその中で生きる個人との関係性」というテーマを追求してきた黒沢監督。その思いを初めて挑んだ歴史ドラマに込め、大きな成果を上げた。 (鈴木 元)

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2020年9月14日のニュース