大河「麒麟がくる」 長谷川博己と佐々木蔵之介のコントラストの妙味

[ 2020年9月14日 12:15 ]

13日放送のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」で一堂に会した(左から)佐々木蔵之介の豊臣秀吉、染谷将太の織田信長、長谷川博己の明智光秀(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】13日放送のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」で、初めて明智光秀(長谷川博己)、織田信長(染谷将太)、豊臣秀吉(佐々木蔵之介)の3人が一堂に会した。のちに光秀が本能寺の変で信長に謀反を起こし、その光秀を秀吉が討ち取ることになると思うと感慨深かった。

 場面は1564年の尾張・小牧山城。光秀は将軍の足利義輝(向井理)から、信長に上洛(じょうらく)させるように伝える命を受けてやって来る。ところが、信長は美濃攻めにてこずっていて光秀の話を聞いている余裕がなく、秀吉を呼び寄せる。

 ここで際立ったのが、佐々木の派手な演技だ。「はあ~」とかん高い声を発しながら、小走りで長谷川の近くへ。「木下藤吉郎にござりまする。以後、お見知りおきを」と深く頭を下げながら長谷川の方に視線を送るが、その表情に浮かぶ抜け目なさが、秀吉の人間性をよく表しているように見えた。一方の長谷川の演技は抑制が効いていて、2人の対比が面白かった。

 信長、光秀、秀吉は過去の大河でさまざまな役者が演じてきた。「国盗り物語」(1973年)では、信長が高橋英樹、光秀が近藤正臣、秀吉が火野正平。「信長」(92年)では、信長が緒形直人、光秀がマイケル富岡、秀吉が仲村トオル。「秀吉」(96年)では、秀吉が竹中直人、信長が渡哲也さん、光秀が村上弘明。いずれも、興味深い配役だ。今回の3人の組み合わせは、どうなることかと思ったが、13日の放送を見て期待がふくらんできた。

 制作統括の落合将チーフ・プロデューサーは3人の役作りに関して「時に自由自在に楽しそうに、時に自らを厳しく律して三者三様につくりあげている印象を受けた」と説明。その成果として「今まで見てきた光秀、信長、秀吉とはまるで違う印象の英傑として、このドラマ独自の世界観を表現していただいている。時代劇も信長も知らない子供たちが見れば、この3人がスタンダードになると思う」と強い自信を示す。

 13日の放送では、光秀が「陰」で秀吉は「陽」、光秀が「静」で秀吉は「動」というイメージを受けた。今後、物語が進むにつれて2人のコントラストはさらに強くなっていくのだろうか。

 落合氏は「後半、光秀のライバル(敵)は秀吉になっていく。そういう意味でのコントラストはより強くなっていくと思う。武士という桎梏(しっこく)にこだわり、逃れられない光秀。本心では武士が嫌いな平民あがりの秀吉。二人を描いていくことで、生き様の違いがより鮮明になっていくだろう」と話す。

 長谷川と佐々木が見せる芝居の対比の妙味が今後の見どころの一つになる。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。

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