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米子東 甲子園で優勝するために 鳥取の秀才軍団が実践する組織マネジメントとは…

[ 2022年7月7日 08:00 ]

ペンタゴンバーで体力強化を図る図る米子東・藪本
Photo By スポニチ

 本気で甲子園優勝を目指す秀才軍団がいる。その名も鳥取県立米子東高等学校。県下屈指の進学校で、文部科学省が指定するスーパーサイエンスハイスクール(SSH)だ。昨夏も含めて春夏通算24回の甲子園出場を誇る野球部は、大正、昭和、平成で勝利を積み重ねてきた。令和の新時代に目指すは、県勢初の全国制覇。スポニチドラフト【アマチュア野球専門チャンネル】で、その姿を追った。 米子東の練習動画はコチラ

 昨夏も甲子園で5番打者を務めた米子東・瀬川凜太郎主将(3年)には毎朝の日課がある。「甲子園決勝で大阪桐蔭に勝ち、これまで応援してくださった人たちに喜んでもらう」。鮮明にその姿を想像し、学校へと向かう。部室のロッカーにも目標達成シートを貼り付けてある。生半可な気持ちではない。本気で甲子園優勝を目指しているのだ。

 「甲子園で勝ち上がる、日本一になることを追い求めて毎日やっています。必ずできると信じてます」

 ただ、やみくもに、大それた目標を口にしているわけではない。入学以来、根拠に基づいた練習に明け暮れてきたからこそ、33人の部員全員が同じ思いを共有できるまでになった。打撃では阪神でトレーナーを務めた経験を持つ前田健氏(現ベースボールパフォーマンス代表)が提唱する打撃ドリルに取り組む。取材に訪れた日は、15種類に及ぶメニューを消化。紙本庸由監督によれば「2年生になれば、全員が一つ、一つのメニューの意図を説明できるようになります」と習熟度は高い。

 昨夏の鳥取大会で大会記録となる5本塁打をマークした太田舷暉外野手(3年)も、入学後に成長を遂げた選手の1人だ。「中学時代とは全然、打ち方も違います」。骨盤への意識を高め、コースや高さによって肩甲骨の使い方を変えるスイングには、絶対的な自信がみなぎる。

 瀬川、太田だけでなく、昨夏の日大山形戦では2年生5人がスタメンで起用された。1―4で敗れたとはいえ、相手を上回る12安打をマーク。昨秋、今春とも県大会は準々決勝で敗れたが、練習試合では各地の強豪校を圧倒するなど打線の能力は例年以上だ。エース右腕・藪本鉄平は最速142キロを誇り、制球力も向上。甲子園で戦える布陣がそろった。

 もちろん、勉強も、おろそかにすることはない。2年生部員の木下啓吾捕手の学力は学年でもトップクラス。将来の夢を尋ねると、「東大に入学して神宮でプレーすること」を掲げてくれた。19年に春夏連続で甲子園出場を果たした際のエース左腕・森下祐樹は慶大に進み、今春のリーグ戦で4試合に登板。明大2年の山内陽太郎は昨春1年生でリーグ戦デビューを果たし、昨夏のエース右腕・船木佑は法大で白球を追う。

 「甲子園優勝」と「東大合格」という目標の両立を可能にしているのが、徹底されたタイムマネジメントだ。紙本監督が掲げる方針のもと、選手たちは「10分刻み」の予定表を前日に作成。授業の合間にある10分間の休み時間や、電車に乗る際の待ち時間をかき集め、予習、復習に充てる。その結果が「7時間は必ず睡眠する」という約束を可能にし、進学校とは思えない堂々たる体格づくりに一役買っている。実際、昨夏の甲子園49代表校のうち、身長比体重の平均値はNo・1だった。

 ここまでの取り組みを読めば、いわゆる「文武両道」というワードが浮かび上がってくるが、紙本監督の考えは少し違う。

 「文武両道は前提として部活と勉強は別物という話になると思うのですが、そもそも学校の目的というのは学力を身につけるためにある。その手段として部活があるというのが私の考えで、国語や英語などの科目も、野球部での活動も全ては横並びで、等しく学力を養う手段に過ぎない、と。だから僕は生徒に対して文武両道ではなく、文武は不岐だと伝えています」

 甲子園で勝つための日々の鍛錬が受験に生かされ、学校の勉強に全力で向き合うことが甲子園で勝つことにつながっていく。戦後初となる鳥取大会3連覇はあくまで通過点。文武不岐(ぶんぶふき)をモットーに掲げる秀才軍団が、甲子園の夏を熱くする。

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