進学校の野球部を強豪に育て上げた秘訣 彦根東・村中隆之元監督インタビュー

[ 2021年4月13日 13:32 ]

彦根東を率いた村中隆之元監督
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 彦根東を春夏通算3度の甲子園出場に導いた村中隆之元監督(現野洲高教頭)が本紙の電話インタビューに応じた。練習環境にも恵まれない滋賀県内屈指の進学校を強豪チームに育て上げた、秘訣の一端を明かした。

 ――限られた戦力の中、投手をつくる際はどのような工夫をされていましたか?
 村中氏 たくさん、つくるようにはしていました。ある夏の大会などは、20人のうち6人が投げられた。土日で練習試合を2試合ずつ組むにしても、最低5人は必要になってくるわけです。私の場合、まずは打撃投手をやらせて適性を見ました。逆に言えば、ブルペンを重要視することはなかったです。

 ――対打者が重要と言うことですね。
 村中氏 彦根東はグラウンド全面で打撃練習できないこともあり、鳥かごの中での実戦形式を取り入れていました。変化球込みの投球で投手にとってはもちろんですが、打者の練習になるわけです。キャッチャーもつけますから、打ち取るプロセスの中で配球も学ぶことができます。時には「打たれる配球でやってみろ」という条件を設けることもありました。

 ――わざと、打たれるというのはユニークな発想です。
 村中氏 打者は投手、捕手ともしゃべりながらやるんです。「今の変化球は打ちにくかった」とか。打者に伝えてもらうことで、バッテリーは段々と分かってくる。真剣勝負ですから、打者も集中力を持って取り組むことができますし、相乗効果があったと思います。

 ――限られた環境の中でも、メニュー一つで大きな効果が得られる。
 村中氏 甲子園に出たときの裏話ではないですが、球場を割り当てていただいて打撃練習していると、段々と打者の調子が悪くなってくるんですよ。彦根東は鳥かご、あるいは近隣のバッティングセンターを使用させていただくことが大半でしたので、普段は狭いところでしか打撃をしません。だから、打球の着地点を見ずにボールを打つことしか考えてなかったのが、着点を見ることで集中力がそがれていくわけです。どこで打つか、ということよりも、集中力を高めて打撃練習に臨むことの方が大切だということです。

 ――実戦についてもお伺いします。彦根東は劣勢に立たされても粘り強いイメージがありました。
 村中氏 まず、劣勢を誰がつくりだしているのか、ということですよね。私の考えで言えば、監督の采配で劣勢になっている場合が多々ある。たとえば、自分の出したサインがことごとく決まらない。そういう時は正直に「すまん、きょう、オレついていないから、しばらく様子見させて」と話すようにしていました。邪魔をしない、ということです。

 ――采配をしないとは、大胆ですね。
 村中氏 それで言うと、練習試合ではわざと選手の邪魔をすることがありました。あえて難しいカウントのときに、エンドランのサインを出してみる。普段から練習試合でそういうことをしておけば、邪魔をしないというだけで公式戦の戦い方が楽になるわけです。あと、公式戦で劣勢に立たされたケースでは、相手を「0」に抑えるイニングを最低四つ続けることにこだわっていました。

 ――四つ「ゼロ」を続けることの意図するところは何ですか?
 村中氏 立ち上がりで5、6得点奪われたとします。流れを切るためには三つではダメ。ゼロのイニングを四つつくり、こちらが1点ずつ返していけば試合が落ち着いてくる。5、6点差があるから一気に大量点を取りにいくのではなくて、序盤で大きく離されたケースは1点ずつにこだわりました。落ち着いた采配というんですかね。  

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2021年4月13日のニュース