ペットボトルとチェンジアップ…広島・大瀬良の探求心と優しさが詰まった森下との“物々交換”

[ 2020年10月3日 09:00 ]

笑顔を見せる森下暢仁投手(左)と大瀬良大地投手(右)
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 7月上旬の練習中、広島・大瀬良大地投手(29)は、森下暢仁投手(23)と熱心に話し合っていた。ボールを使いながら、変化球の握りを確かめているように見えた。普段と明らかに違ったのは、大瀬良から森下に教えを請うていたことである。

 きっかけは、コロナ禍での開幕延期期間にさかのぼる。「チェンジアップは、どう投げてるの?」。大瀬良の探求心から始まった雑談だった。森下が持つ3種類の変化球(カットボール、カーブ、チェンジアップ)のうち、唯一大瀬良の持ち球にない球である。

 「自粛期間中から握りとか投げ方を森下に聞いていました。遊びで投げていたんですけど“この感覚は違うな…”と思って、もう1度確認してみました」

 完全習得を目指した。「相手のベンチも見ていると思う」と試合中のイニング間の投球練習で試投し、7月下旬の試合では実際にサインが出た。「アツさん(会沢)が要求したので驚いた。腕が緩んで、まだまだでした」。今季はシュートを習得。それでも飽き足らず、また新球が増えようとしていた。

 お礼ではないものの、大瀬良から森下へプレゼントがあった。2・5リットル容量の特大ペットボトル。大瀬良が脱水症状を防止しようと昨季からベンチに持ち込んでいたものを引き継ぐことになった。「渡すだけ渡しておくから、使う使わないは任せるよ」。この一言を添えるところが大瀬良の優しさである。

 その後、大瀬良は右肘手術を受け、今季絶望となった。森下に「考え過ぎず、ケガなくシーズンを終わればいいから」と伝え、「大地さんの分まで…という気持ちは当然あります」と新人は決意した。

 コイ投なら誰もが、大瀬良の向上心に影響を受けてきたことだろう。大瀬良の貢献は、離脱したいまも、きっと続いている。(記者コラム・河合 洋介)

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2020年10月3日のニュース