阪神・近本 活躍支えた7種類のティー打撃を自ら解説 「いつも同じ本数を」
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阪神の近本光司外野手(25)はルーキーイヤーだった今季、長嶋茂雄(巨人)を超えるセ・リーグのシーズン新人最多159安打を放った。球団史に名を刻む活躍を支えたのは、試合前打撃練習の際にルーティンとして行っていた、通常のものを含む7種類のティー打撃だった。どのような意図と目的を持って取り組んでいたのか。近本本人に解説してもらった。(取材・構成 巻木 周平 10月30日付関西版紙面に掲載)
試合前の打撃練習において近本は、いつも同じ流れでプレーボールへの準備を進めていた。ティー打撃では、通常の打撃フォームで10球打ったあと(写真上段左)、異なる6種類のティー打撃へ移った。
■置きティー(写真上段中央)
「僕の場合、調子が悪い時はポイントが近くなりすぎて、トップが背中側に入ってしまうことが多いんです。その修正。正しいポイントで打てているかどうかの確認です」
構えた位置から手をグッと捕手側に引いてトップを作るが、そこが乱れると連動してミートポイントにも乱れが生じる。その防止策として実践したのが、チームが“置きティー”と呼ぶものだ。
■左膝を地面に付ける(写真上段右)
「前(投手側)の壁を感じながら打つ練習です。左膝を地面に付くと、体が強制的に開かなくなる。その意識付けですね」
左膝を地面に付け、右膝を「立て膝」にすることで体が開かないために必要な「前の壁」をつくることができる。その結果、センター方向に力を無駄なく伝えるスイングが可能になる。ただ、何事も偏りは禁物。だからこそ、逆の右膝も地面に付けて行った。
■右膝を地面に付ける(写真下段左)
「左膝を付くだけでは手だけでスイングしてしまう。逆の右膝を付くと体と視界が開けた状態なので、前(投手側)の壁を感じるのが難しくなる。強く意識しないとバットをピッチャー方向に出せない、ということです」
開かない状態をつくる左膝付きと違い、あらかじめ体が開いた状態だからこそ“開かないように”という強い意識が必要になる。本質的な目的は両膝とも同じ。開かずボールに力を伝え、安打確率の高いスイングを実現するための意識付けだ。
■右腕だけでスイング(写真下段左から2番目)
「自分の特徴として左手の押し込みが強く、普通に打つ時も左手を意識して打っています。良いことなのですが、その分、右手の使い方が下手なので、左右のバランスが偏らないように」
捉えたボールを利き手である左手でグっと押し込むのは得意。小柄でも9本塁打した一因だが、偏りはスイングの乱れにつながる。それを防ぐために「下手」と自覚する右手の使い方の改善を図っている。
■スイング後に右足を戻す(写真下段右から2番目)
「しっかり踏み込めているか…の確認です。(エンゼルスの)大谷翔平は(軸足の)左足を前(の右足)にぴょんっとぶつけるじゃないですか? 話したことはないですけど踏み込みの確認だと思うんです。ただ、僕はあれだと前に突っ込んでしまう。だから、踏み込んだ右足を(スイング後に)戻して、軸足の左足で確認しているんです」
左打者で言う、左足を右足方向にぶつけるように振る練習法は、大谷をはじめ球界でもたびたび見られる。近本も試したが、自身のフォームや体の構造ではデメリットが多いと判断した。“逆の形”をとることで、質の高い打撃に不可欠な「踏み込み」を確認している。
■低めの球を拾う(写真下段右)
「低めのボールをセンターよりも少し左方向に打ち返すと、落ちる変化球の対応の練習になる。スイングが一塁側にいくと当たらなかったり、右方向にひっかけたりしてしまうので、ヘッドは返さず、ピッチャー方向にスイングの軌道をもっていって、なおかつ体が開かないよう、体全体で投手方向に押し込むイメージです」
自身の弱点として、低めのフォークや内角低めに食い込んでくるスライダーを空振りしてしまう傾向を挙げる。「苦手ですね」という弱みを突かれても対応できることを想定している。
「いつも同じ本数を振ることで、例えば“こういう打球が飛ぶということはスイングがこうなってるな”と感じられるんです」
置きティー以降の6種類を各5球打ったあと、再び通常のフォームで打ち、打撃ケージに向かうのがルーティン。これらの練習法には独学のものもあれば、同じ小柄な左打者だった平野打撃コーチ(来季から2軍内野守備走塁コーチ)から伝授されたものもある。連日試合のあるプロ生活は初体験だった1年目。そんな中でもコンスタントに結果を残せた裏側には「独特のティー打撃」があった。
◆記者フリートーク 当企画の作成を決めたのは8月下旬。以降、一つ一つの練習法を「今日はあの打ち方について」、「今日はこれについて」といった具合に取材を進めさせてもらった。
体の動きや意図を言葉で解説するのは難しい。なにより、こんなにも細部まで質問された経験は少なかったはずで「なんて言ったらいいですかね…」と詰まる時が何度かあった。それでも“その場しのぎ”で終わらせることなく「やっぱり難しいですね。まだ言葉にできていないので、言葉にできたら逆に教えてください。僕も考えます」と、的確な表現を見つけるために尽力してくれた。
日々の取材で発するコメントも具体的で意図を感じるものばかり。「言葉」や「発信」に対するこだわりは、プロ野球選手・近本の武器の一つではないかと感じている。(阪神担当・巻木 周平)
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