金足農・吉田14K完投 スカウト大絶賛の嵐、“平成最後の怪物”名乗り

[ 2018年8月9日 05:30 ]

第100回全国高校野球選手権記念大会第4日・1回戦   金足農5―1鹿児島実 ( 2018年8月8日    甲子園 )

<金足農・鹿児島実>14奪三振の完投勝利を挙げた金足農・吉田(撮影・近藤 大暉)
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 1回戦4試合が行われた。第2試合では金足農(秋田)のドラフト1位候補、吉田輝星投手(3年)が157球を投げ、9安打1失点で完投勝利。最速150キロを誇る右腕は、毎回走者を背負いながら、ピンチでギアチェンジ。球速を変えた直球を軸に14三振を奪い、同校を23年ぶりの勝利に導いた。

 淡々と投げていた右腕に力が入った。3点リードの5回1死二塁。1番・山下馨に対して内角へ投じた直球は、この日最速の148キロを計測し、見逃し三振に仕留めた。続く2番・西畑も145キロ直球で投ゴロ。「走者を出したからギアを一つ上げました」とサラリと言ってのけた。

 無走者で130キロ台だった速球は、ピンチで140キロ台中盤に一気にはね上がった。吉田は「自分の直球には3段階ギアがあります。走者なしではギア1、走者一塁か三振が欲しいときはギア2、得点圏に走者がいるときはギア3」と明かした。それぞれ138〜142キロ、143キロ〜145キロ、146キロ以上と説明するが、137キロ以下の「ギア0」も含めれば4段階あった。秋田大会全5戦43回を投げ抜いた右腕は「甲子園も全部自分が投げたい」と完投にこだわる。体のバランスをとり、リリースを調整しながら、9回でも145キロを叩き出した。

 試合の流れを読む洞察力も抜群だった。14三振のうち直球で12三振。「低めの変化球に手を出してくれないので」と決め球に直球を選択。さらに、打者が低めを捨てていることから、高めに投じて9三振。毎回走者を背負って157球を費やしたが「これだけ投げた割には疲れていない。あと3回は投げられます」と笑い飛ばした。

 鍛え上げられた下半身が「変速ギア」搭載につながった。冬場に1日平均2時間走り込み、雪の降り積もる秋田の地を長靴で3時間走った。「一番つらかった練習」と話す球場の左翼ポールから右翼ポールまで5往復するおんぶ走。当時体重100キロ近かった4番・打川を担いだ。「誰よりもつらいことをしてきた自信がある」。豊富な練習量で積み上げた自信は、聖地でも揺らぐことはなかった。

 金足農として23年ぶりの初戦突破に導いたが、8回に1点を失ったことに「(失点は)完封できるぞという心の隙を突かれた。今日の出来は30点」と言った。初出場した84年はベスト4。しかし、右腕の見ている景色は、もっと上にある。 (武田 勇美)

 ▼広島・白武佳久スカウト部長 フォームに無駄がないし、真っすぐが素晴らしい。ここまでの投手の中ではダントツ。1位は間違いない。

 ▼巨人・岡崎郁スカウト部長 高校生ではトップクラス。ギアの入れ方やペース配分も素晴らしい。

 ▼ソフトバンク・永井智浩スカウト室室長 高校生のレベルを超えている。もう確実なものが見える。

 ▼中日・中田宗男スカウト部長 ゆるんでもしっかり指に掛かった球を投げられるのが凄い。この投げ方はプロでもできる人は少ない。

 ▼楽天・長島哲郎スカウト部長 今年の高校生右腕では間違いなくNo.1。完成度が高く、器用ですね。

 ▼ヤクルト・橿渕聡スカウトGデスク 藤川球児みたいにホップする直球。体も強いしスピンがよく掛かっている。

 ▼阪神・葛西稔スカウト 力をセーブした制球重視の直球とギアを上げた140キロ台後半の直球、この2つのパターンにセンスの良さを感じる。

 ≪吉田 輝星(よしだ・こうせい)≫

 ☆生まれとサイズ 2001年(平13)1月12日生まれ、秋田県潟上市出身の17歳。1メートル76、81キロ。右投げ右打ち。

 ☆球歴 父・正樹さんの影響で小学3年から天王ヴィクトリーズで野球を始め、小学5年から投手一筋。中学は天王中の軟式野球部に所属し県ベスト4。金足農では1年秋からエース。昨夏の秋田大会は決勝の明桜戦に1―5で敗れた。

 ☆趣味 音楽。特に「三代目 J Soul Brothers」がお気に入り。試合前にドラマ「HiGH&LOW」の主題歌「MUGEN ROAD」を聴くことがルーティン。

 ☆好物 大の甘党で、縁日で売っている屋台のチョコバナナが好物。

 ☆好きな言葉 「覚悟」。2年の夏の大会前から帽子のツバにマジックで記入。

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