二所ノ関親方 独立から3年――初めて送り出した優勝力士の大の里を祝福 素直で懐大きな男と一緒に成長を

[ 2024年5月27日 05:00 ]

大相撲夏場所千秋楽 ( 2024年5月26日    両国国技館 )

<大相撲夏場所千秋楽>大盃を手に笑顔を見せる大の里。右は二所ノ関親方、左は父・中村知幸さん(撮影・三島 英忠)
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 21年夏に田子ノ浦部屋から独立して3年。師匠として初めて優勝力士を送り出した二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)が愛弟子の快挙を称えた。スピード優勝の要因を分析するとともに、大の里の今後へも期待した。

 大きなことをやってくれました。新入幕から所要3場所。私が初めて賜杯を抱いたのは、史上2番目に遅い所要73場所でした。正直私の中ではあり得ないスピードです。

 小結は序盤から横綱、大関との連戦が続くので楽な地位ではありません。だが大の里はいとも簡単に克服しました。鍵とみていた序盤を1敗で乗り切れたのも大きかった。初日の照ノ富士戦は初対戦で土俵際でぶん投げられた反省を生かし、一気に前に出ず、ひと呼吸置いたところに成長を感じました。11日目の豊昇龍戦。土俵の真ん中でぶん投げられ、普通なら心が折れるところでも、しっかり切り替えることができた。阿炎戦はもっともつれるかと思いましたが文句なしの相撲。大一番でも冷静でした。

 「大の里」は、自分が“これぞ”という弟子につけようと温めていたしこ名です。いい子がいると聞いて日体大で初めて彼を見ましたが、ダイナミックという言葉がふさわしい印象でした。入門前の稽古で初めて胸を合わせた瞬間、「当たってからの二の矢、三の矢がいい。これでもっと腰を下ろせればどこまで進化するのか」と大きな将来性を感じました。二の矢、三の矢を生かすためには立ち合いの強化あるのみ。理想的な立ち合いを生み出すために基礎運動の大切さを口を酸っぱくして言い聞かせていました。まだまだなところもありますが、これは永遠のテーマです。

 最大の魅力は人間としての懐の大きさ。自分自身の現状をしっかり把握できる素直な心があります。学生時代に輝かしい実績を残し鳴り物入りでプロ入り。頂点まで極めた男ですから、培った自分のスタイル、信念を持ち、それにこだわるのは当たり前です。しかし、学生相撲とプロは根本的に違うというのが私の持論。これまで自分のスタイルにこだわり過ぎて思うような結果を出せなかった力士を多く見てきました。大の里は私のアドバイスにもしっかりと耳を傾け、自分なりに解釈し、日々の鍛錬、技量向上につなげています。

 ここが終着点ではありません。大事なのは「最後にどこの位置にいるか」。課題とする立ち合いも彼の持っているポテンシャルからしたら半分にも至っていないでしょう。常に研究熱心な男。伸びしろも大きいので、私と一緒に成長してもらいたいものです。(元横綱・稀勢の里)

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