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【コラム】戸塚啓

来季の名古屋グランパス

[ 2016年12月4日 10:15 ]

 J2へ降格した名古屋グランパスが、新外国人選手の獲得を発表した。

 契約満了や移籍が数多いだけに、新たな補強へ動くのは当然だ。ただ、新監督の決定を前に来季の編成を進めるのは、危険を伴うのではないだろうか。

 現実的には新監督との交渉が並行して進められ、補強に関するすり合わせも行なわれていると考えられる。それにしても、順番を大事にしたほうがいい。新たな指揮官を発表し、そのうえでチームを編成していくほうが、不要な詮索をされないで済む。現状では「チームの方向性は定まっているのか?」との疑問を抱かれかねない。

 J2リーグは簡単でない。タレントの質と量ではJ1に見劣りしないセレッソ大阪が、2シーズン連続で自動昇格圏内の2位以内を逃したのは、J2リーグの難しさを表している。

 対戦相手によって選手を入れ替え、戦略を変えてくるチームが、J2では少なくない。勝点を取るための割り切ったゲーム運びが、J1よりも多く展開されている。自分たちの良さを出しきれば勝てるわけではなく、力ずくでゴールをこじ開けるような攻撃もできなければ、J1昇格レースに絡んでいけない。

 昇格レースが佳境を迎えれば、前半からいきなり後半終了間際のようなプレー──中盤を飛ばしたクロスボールの応酬になることもある。スタジアムを包む込む空気感は、J1の優勝争いや残留争いとも違う。とにかく独特なものがある。

 個人が搭載すべき技術や戦術、チーム戦術の練度などはもちろん重要だが、それ以上にメンタリティが問われると感じる。昇格を使命とするチームならば、なおさらタフでなければならない。

 J1昇格の経験を持つ佐藤寿人の獲得は、その意味で大きい。J2の舞台から長く遠ざかっているとはいえ、彼の経験と実績とリーダーシップは、再生を期すグランパスの支えとなるはずだ。

 その一方で、ブラジルからやってくる3選手は不確定要素を含む。彼らを中心としてチームを作っていけば、個々が特徴を発揮することはできるだろう。とはいえ、Jリーグでプレーするのは初めてだ。チーム戦術をすぐに理解することができても、日本のサッカーにもすぐに馴染めるとは限らない。誰かひとりでもJリーグ経験者がいれば、状況はまた違うのだが。

 いずれにせよ、新監督の発表が急がれる。なぜその監督を選び、どのようなサッカーを目ざすのかを明らかにすることは、さらなる選手の獲得にもつながっていくからだ。

 最後にひとつ、触れておきたいことがある。航空機が墜落する事故に見舞われたシャペコエンセに関わるすべての人々に、哀悼の意を表したい。

 Jリーグで采配をふるったことのある監督、プレーをした選手も、犠牲者には含まれている。ブラジルから遠く離れた日本で、Jリーグの発展に力を注いでくれた彼らと、彼らが愛したシャペコエンセに、心からのお悔やみをお伝えしたい。(戸塚啓=スポーツライター)

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