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【コラム】戸塚啓

代表活動の重要性 競争が次のフェーズへ導く

[ 2021年4月8日 11:00 ]

 代表が活動する意義は深い──Jリーグを観ていると、そんな思いに駆られる。

 日本代表とU-24日本代表が、3月末にそれぞれ2試合ずつを消化した。日本代表は昨年10月と11月に、コロナ禍で初のテストマッチを行なっている。ただ、ヨーロッパを開催場所に選び、海外組だけでチームが編成された。国内でプレーする選手が最後に日本代表に招集されたのは、19年12月のE-1選手権までさかのぼらなければならない。国内組と海外組を合わせたメンバーでの戦いとなると、さらに1か月前の19年11月が最後になる。

 U-24日本代表は、20年1月のAFCU-23選手権以来の活動だった。同選手権には海外組がごく一部しか参加していないため、こちらも実質的には19年12月以来の活動だった。

 かくも長い空白期間の間には、所属クラブでポジションをつかんだ選手、所属クラブが変わった選手、学生からプロ入りした選手などがいる。日本代表入りへ、東京五輪出場へ、アピールの機会を待ち望んでいた選手は多かったはずだ。そうした飢えた思いが、日本代表の韓国撃破とモンゴル戦の歴史的大勝に、U-24日本代表のアルゼンチン戦の勝利につながったのだろう。

 18年のロシアW杯後に就任した森保監督のもとで、日本代表は一見すると順調な道のりを歩んできた。最低限の結果を残しながら、世代交代も進めていった。

 ただ、漠然とした不満は募った。「W杯でベスト8」という目標に照らすと、チームとしても個人としても競争力が物足りないのだ。

 しかし、昨年11月のメキシコ戦で世界基準のスタンダードを確認したチームは、韓国を攻守にスキなく退けた。ソン・フンミンが不在だったとしても、3対0の快勝はインパクト大だった。格下のモンゴル相手にも油断なく大勝した。

 森保一監督の選手選考と、試合での起用法も良かった。

 日本代表には初招集が多かったが、いずれもクラブで好パフォーマンスを持続していた選手たちである。客観的な視点で「試してほしい」と思われる選手たちが選ばれ、なおかつピッチに立ったのは、当事者のモチベーションを高めると同時に、今回は選ばれなかった選手たちへの刺激にもなったはずだ。

 3月の国際試合以降のJリーグを観ると、ピッチ上の熱量が一段上がったように感じる。モンゴル戦後、森保一監督は「Jリーグでプレーする選手たちには、普段とは違う刺激を持ち帰ってもらって、レベルアップにつなげてほしい。彼らを通してそのチームの他の選手のレベルアップにもつながっていけば」と話していたが、まさにそういった好循環がリーグ全体へ広がっている印象だ。日本代表に選ばれるということを、自分事として考える選手が増えている。

 現在は日本代表とU-24日本代表として活動しているふたつのチームは、東京五輪後にひとつにまとまる。50人から60人の大きなグループが、9月開幕予定のカタールW杯最終予選から20数人に絞り込まれる。代表入りを狙う候補者が多いだけでなく、代表入りをめぐる競争のレベルが上がってきたことで、日本代表は新たなフェーズへ突入したようだ。(戸塚啓=スポーツライター)

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