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【コラム】戸塚啓

五輪選手のメディア対応 Jリーグも情報発信として積極的に

[ 2018年2月22日 07:00 ]

 テレビも、新聞も、ネットニュースも、ラジオも、このところ平昌オリンピックで一色である。戦前の期待どおりに表彰台に立った選手が多く、メダル獲得数は史上最多を記録しているから、メディアが盛り上がるのは当然だろう。

 個人的に目がいくのは、表彰台に上がれなかった選手である。

 メダルを逃した選手たちも、テレビのインタビューに答えている。マイクの前で涙をこぼす選手もいるが、インタビュアーとのやり取りが成立しなかった、という選手は見ていない。競技終了直後の生の声を、日本にいながらにして聞くことができている。

 それが当然だと、僕には思えない。

 4年分の思いを注いできた五輪の舞台で、結果を残せなかった──心がざわつかないはずがない。まだ汗もかわかない競技終了直後に質問をされても、すぐには気持ちを整理できないだろう。

 悔しい。歯痒い。悲しい。申し訳ない。あらゆる負の感情で、胸のなかが埋め尽くされ、言葉に詰まってもおかしくない。感情の鎖が千切れてもしかたがない。

 五輪は4年に1度の夢舞台であるとともに、競技の認知度を高める貴重な機会でもある。それだけに、選手たちは結果を残すことを使命としつつ、メダルを逃しても何を発信したい、競技の魅力を伝えたい、と考えているのではないだろうか。その結果が、敗者の立場でもマイクの前に立ち、自分の言葉で結果を振り返る姿勢につながっていると思うのだ。

 ひるがえって、Jリーグである。

 2018年シーズンは、2月23日に開幕する。平昌オリンピックが最終盤を迎えるタイミングだけに、開幕前の盛り上がりに欠けるのはしかたがないのかもしれない。

 それにしても、今年はW杯イヤーである。W杯のメンバー入りを賭けたアピールの舞台として、開幕前から注目が集まっていい。

 ところが、Jリーグの話題でメディアがにぎわっているとは言い難い。インターネットのポータルサイトを見ても、サッカー関連は日本人選手に関係のない欧州サッカーがヘッドラインに並んでいる。

 電車に乗っていても、ターミナル駅に通路を歩いていても、「Jリーグ」の文字が目に飛び込んでくることはほとんどない。各クラブがホームタウンにポスターを貼っているぐらいで、Jリーグとしてのプロモーションが欠けているのは間違いない。

 各チームの情報発信も、間口が狭い印象だ。拡散力のあるSNSを活用した情報発信には熱心なようだが、クラブ公式のSNSをチェックするのは熱心なファン・サポーターが大多数だ。ライト層には届きにくい。

 地域密着と地域貢献を理念とするだけに、ホームタウンを意識した情報発信はもちろん悪くない。ただ、シーズン開幕というタイミングは、サッカーへの関心を喚起するのに格好のタイミングである。「普段はあまりJリーグに関心はないけれど、開幕なら観に行ってみるか」といった誘導が、現状では十分に行き届いていない。

 あとは、選手初の情報発信だろう。お茶の間受けを狙ったり、面白さを探ったりする必要はない。勝っても負けてもしっかり話をする選手が相対的に増えていけば、Jリーグが取り上げられる機会は少しずつでも増えていくと思うのだ。(戸塚啓=スポーツライター)

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