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【コラム】戸塚啓

「選手を育てる」ことが評価されるべき

[ 2017年2月23日 17:36 ]

<2017 Jリーグキックオフカンファレンス>フォトセッションにおさまる(前列左から)横浜・扇原貴宏、浦和・宇賀神友弥、鹿島・鈴木優磨、FC東京・大久保嘉人、Jリーグ・村井満チェアマン、川崎F・中村憲剛、、大宮・大山啓輔、G大阪・藤本淳吾、甲府・堀米勇輝(中列左から)清水・白崎凌兵、神戸・田中英雄、C大阪・杉本健勇、磐田・上田康太、広島・青山敏弘、新潟・大野和成(後列左から)鳥栖・鎌田大地、柏・中谷進之介、仙台・増嶋竜也、札幌・宮沢裕樹
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 25年目のJリーグが、今週末に開幕する。

 村井満チェアマンはリーグ開幕前のカンファレンスで、「Jリーグが本格的な競争の時代に突入する」と話した。「このままアジアで勝てない状況が続くと、Jリーグそのものがガラパゴスになってしまう危機感がある。こういう危機においては、内なる競争を激しくしていくことが不可欠」と説明した。08年を最後に優勝から遠ざかり、韓国や中国の後塵を拝しているACLでの復権を、強く意識していることがうかがえる。孤立するわけにはいかない、取り残されるわけにはいけないとの危機感が、「ガラパゴス」という表現につながったはずだ。

 内なる競争を促す施策が、各クラブへの配分金の見直しである。均等配分金が増額され、理念強化配分金が新設された。原資となるのは、『ダ・ゾーン』と結んだ巨額の放送権料である。

 「均等」ではなく「傾斜」の理念強化配分金は、より高みを目指すクラブへのリーグからの投資という位置づけだ。監督や選手の獲得を通してサッカーの魅力を高めるクラブの登場に期待する、というのがJリーグの狙いである。身の丈に合わせた経営から、投資型の経営へシフトするクラブの登場を促す、という言い方もできるに違いない。

 17年にJ1で優勝したチームには、総額15・5億円が10億円、4億円、1・5億円の3回に分けて配分される。これとは別に、J1優勝の賞金が3億円ある。

 監督や選手を獲得する原資としては、それなりの規模だろうか。年俸5億円クラスの選手なら、複数年契約が可能になりそうだ。

 Jリーグからクラブへの投資は、17年から19年までを第一ステップと位置づける。この3年間はJ1へ集中的に投資し、国内トップレベルの引き上げを目論む。理念強化配分金をめぐって内なる競争が激化することで、国際的な競争力を高めていく、というシナリオなのだろう。

 ACLでの復権は、Jリーグの対外的な価値を高める。アジアにおける新たな事業の開拓へつながる。J1の上位クラブへの投資がJリーグ全体に利益をもたらす、という考え方は成り立つはずだ。

 『ダ・ゾーン』を原資とした投資は、育成にも注がれるべきである。投資先の最上位が育成であるべきだし、すでに決定している施策があれば発表してほしいものだ。

 傾斜配分金の使いかたにも、育成を含めていい。たとえば、アカデミーからトップチームへ昇格した選手のリーグ戦出場が、一定期間内に一定数へ到達したら、それに対して配分する。アカデミーに時間と、お金と、人材を注いだクラブには、相応のリターンがあっていい。

 育成にはそれだけの価値がある。競争社会が著しい格差を生まないためにも、「選手を育てる」ことが評価されるべきだと思うのだ。(戸塚啓=スポーツライター)

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