【コラム】戸塚啓

E-1選手権韓国戦 勝利を目ざす先にチームの底上げ

[ 2019年12月16日 18:00 ]

 E-1選手権は難しい大会だ。

 海外組は基本的に招集できない。

 国内組は長いシーズンを終えたばかりである。Jリーグの戦いから解放された選手たちが、脱力感や達成感といったものに襲われてもおかしくない。メンバー発表後に室屋成がケガで辞退を余儀なくされたが、韓国へ向かった選手たちも当然ながら疲労感はある。

 編成されたチームも急造だ。10日の中国戦にはいつもの4-2-3-1ではなく3-4-2-1で臨んだ。文字どおりのぶっつけ本番だった。

 今大会の意義は三つある。

 13年以来の優勝を勝ち取る。

 チームの底上げをはかる。

 東京五輪を見据えた強化を進める、ということだ。

 三つはつながりを持つ。そのうえで言えば、チームの底上げが最優先されるべきだろう。対戦相手との力関係から判断すれば、経験が少ない選手の力量を見極める機会と位置付けられる。

 JリーグMVPと得点王に輝いた仲川輝人は、中国戦では起用されなかった。

 27歳のスピードスターは今大会の最注目選手と言っていい存在で、アタッカーは個人的な勢いを生かせるポジションだ。いままさに使いたい選手であり、誰もが見たいと考える選手でもある。森保監督が交代カードを一枚残したことも、仲川が起用されなかったことへの疑問を掻き立てたようだった。

 前半29分に鈴木武蔵の代表初ゴールで先制したものの、試合の主導権を掌握するには至っていなかった。GK中村航輔が身体を投げ出す場面こそ少なかったが、後半の早い時間帯から交代のタイミングはあった。

 それでも、森保監督は動かなかった。最初の交代カードは、2対0にリードを広げた70分過ぎだった。二人目は84分だった。

 選手交代について森保監督は、「試合のなかで少しでも修正しながらスムーズになっていくところを見たいと考えた」と説明した。トレーニングにも似た要素を持たせていたために、先発の11人をできるだけ長く使った、ということだろう。東京五輪世代を含めた先発メンバーをできるだけ長くプレーさせ、チームの底上げにつなげる見極めをしていった、と理解できる。

 中3日で3試合を消化するスケジュールの必然として、23人の選手を使い分けることになる。果たして14日の香港戦は、中国戦の控えメンバーで先発が組まれた。小川航基のハットトリックなどで、5対0の勝利をつかんだ。

 大量得点を奪ったとはいえ、快勝という表現は控えるべきだろう。勝って当然の相手だからだ。

 森保監督はこの日も、交代ワクをひとつ余らせたまま終了のホイッスルを聞いた。香港戦は現地で取材をしていないので推測になってしまうが、中国戦と同じ理由だろう。

 18日の韓国戦は、再び中国戦のスタメンを中心に戦う、という選手起用が想定される。

 最終戦で激突する韓国は、前ヴィッセル神戸のGKキム・スンギュ、札幌の守護神ク・ソンユン、Jリーグのガンバ大阪でプレーするCBキム・ヨンゴン、Jリーグの複数クラブに在籍したMFキム・ボギョンら、守備陣を中心に経験と実績を持つ選手を揃える。11日の大会初戦では、格下の香港を無難に退けた。14日の中国戦も1対0で勝利した。

 大会名が東アジア選手権だった当時から、韓国戦は分が悪い。13年こそ柿谷曜一朗の活躍で競り勝ったが、15年は1対1のドローに終わり、17年は1対4の大敗を喫した。

 海外組不在のために結果が置き去りにされがちだが、森保監督は「タイトルを狙う」と明言している。出場メンバーにかかわらず熱のこもる一戦で勝利を目ざす先に、チームの底上げがある。(戸塚啓=スポーツライター)

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