【コラム】戸塚啓

今季UCLのベストゲーム リバプール対バルセロナ

[ 2019年5月31日 11:00 ]

欧州チャンピオンズリーグ   リバプール4-0バルセロナ ( 2019年5月7日    アンフィールド(リバプール) )

バルセロナを下し決勝進出を喜ぶリバプールの監督、選手
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 UEFAチャンピオンズリーグ(UCL)は、ヨーロッパ一のクラブを決めるコンペティションである。ただ、そこで繰り広げられる戦いは間違いなく世界最高峰だ。

 UCLには欧州だけでなく南米、アフリカ、北中米カリブ海、アジアやオセアニアからもトップクラスの選手が集結する。各チームの練度の高さは、代表チームを上回る。ハイレベルな攻防が展開されるのは必然だ。決勝トーナメントにもなれば、美しくも壮絶な死闘が繰り広げられる。

 トッテナムとリバプールがファイナルで対峙する18-19シーズンは、アヤックスが躍進した。UCLで優勝経験を持つオランダの名門は、予選2回戦から勝ち上がり、グループステージ2位でノックアウトステージへ進出する。そして、ラウンドオブ16で3連覇中のレアル・マドリードを、準々決勝では一昨シーズン準優勝のユベントスを撃破した。準決勝でもトッテナムと死闘を演じ、アウェイゴールの差で惜しくも敗れた。アヤックスの試合はどれも、スリルとスペクタクルに溢れていた。

 ただ、決勝戦を残すのみとなった今シーズンのUCLで、ベストマッチにあげるべきはリバプールの大逆転劇だろう。バルセロナとの準決勝である。

 敵地カンプ・ノウでの第1戦を、リバプールは0対3で落とした。この時点で、決勝進出には暗雲が立ち込めた。

 バルセロナは準々決勝までの10試合で、複数失点を1度しか許していない。しかも、第2戦のリバプールは、得点源のモハメド・サラーとロベルト・フィルミーノを欠くことになってしまう。

 リバプールに頼もしいデータもあった。バルセロナは前シーズンの準々決勝で、第1戦で奪った3点のリードを守り切れずにローマに敗れたのだ。いずれにせよ、ドイツ人のユルゲン・クロップ監督が率いる通称レッズにとって、ホームでの第2戦は撤退へのカウントダウンになるとの見立てが大勢を占めていただろう。

 ところが、である。スタメンに抜てきされたFWオリジが、開始7分にゴールを奪う。

 1対0で迎えた54分には、後半から投入されたばかりのワイナルドゥムが右足で2点目を決める。さらに56分、ワイナルドゥムがヘディングシュートを突き刺し、2試合合計のトータルスコアを3対3のタイとする。

 試合の流れは明らかにリバプールが握っている。だが、失点をしたらアウェイゴールとして重くのしかかる。バルセロナにはリオネル・メッシがいる。ルイス・スアレスもいる。ほんの一瞬でゴールを陥れる彼らを警戒しつつ、あと1点を奪うのは、なおも困難なミッションである。

 それでも、リバプールは怯まない。前線から相手の攻撃に規制をかけ、4点目を狙っていく。これまで数々の名勝負を生み出してきたアンフィールドに、めったにお目にかかれない奇跡の予感が漂う。

 79分だった。右CKをアレクサンダー=アーノルドがクイックリスタートする。バルセロナの選手たちは、誰も準備をしていない。ボールから視線を外している選手さえいる。ゴール前でフリーになっていたオリジが、右足でネットを揺らした。

 奇跡の逆転劇である。残り時間をしのいだリバプールは、昨シーズンに続いてファイルへ名乗り出た。

 これぞアンフィールド!
 これぞフットボール!
 これぞリバプール!
 これぞUCL!

 2019年5月7日、UCLにまたひとつ伝説が生まれた。(戸塚啓=スポーツライター)

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