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【コラム】戸塚啓

W杯準決勝展望 メッシ中心アルゼンチン、攻撃の破壊力抜群フランス 堅守2チームが立ちはだかるか!?

[ 2022年12月12日 21:30 ]

悲願のW杯制覇を目指すアルゼンチン代表主将メッシ(撮影・小海途 良幹)
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 カタールW杯も、残すところあと4試合となった。日本時間の14日早朝にアルゼンチン対クロアチア、同15日早朝にフランス対モロッコの準決勝が行なわれる。

 アルゼンチンのカタールW杯は、サウジアラビアに敗れる衝撃から始まった。それでも、メキシコとポーランドを2対0で退けてグループ首位を確保し、ラウンド16でオーストラリアに2対1で勝利した。準々決勝では、オランダとの死闘を制した。

 グループステージ3試合とオーストラリア戦は、4-3-3を基本布陣とした。そこからオランダ戦は3バックへ変更し、守備時は5バックで対応した。

 どちらのシステムでも、メッシにできるだけいい状態でボールを託すことから逆算したサッカーである。MFデ・パウルの運動量は、チームの大きな支えだ。グループステージ第2戦から左SB(あるいは左WB)で先発しているアクーニャも、攻撃時に効果的な働きを見せている。オランダ戦で2点目につながるPKをゲットしたのも、左サイドからペナルティエリア内へ侵入した彼だった。

 3-5-2のシステムでメッシに時間を与えるためには、2トップのパートナーとなるアルバレスの働きが重要になる。クロアチアのグヴァルディオルとロヴレンの両CBとのバトルで、ここまで2得点をあげている22歳のFWが優勢に立てるか。試合の行方を左右するポイントと言えるはずだ。

 今回のW杯では、アルゼンチン、ブラジル、メキシコのサポーターが多かった。チュニジア、モロッコ、サウジアラビア、イランも、地理的に近いことから熱い応援を受けた。

 そのなかでも、アルゼンチンのサポーターは圧倒的だ。水色と白のユニフォームを着た観衆がスタンドを埋め、首都ブエノスアイレスで試合をしているかのような雰囲気に包まれている。メッシとその仲間たちにとって、自国のサポーターの後押しを受けられるのは頼もしいだろう。

 フランス対モロッコは、フランスが攻め、モロッコが守る構図になるだろう。

 モロッコは守備が固い。ここまで5試合を戦い、失点はわずかに「1」である。それも、カナダ相手のオウンゴールだ。

 ボールを奪い合う局面で強度が高いだけでなく、連動性と連続性がある。即時性も満たす。アフリカ勢初のベスト4入りを果たしたチームは、ソリッドなディフェンスを強みとしている。アルゼンチンに負けない応援を受けているのも、チームの支えになっているだろう。

 気になるのはケガ人だ。右CBアゲルド、左SBマズラウィがスペイン戦で負傷し、ポルトガル戦ではケガを押して出場した左CBのサイスが途中交代を余儀なくされた。

 正確な左足を持つFWツィエク、今大会2得点のFWエン=ネシリの「個」を生かして得点し、僅差の攻防を制するのがモロッコのゲームプランだったはずである。しかし、攻守両面で制空権を握るキャプテンまで欠くことになると、守備に不安を抱えてしまう。サイスが出場できるかどうかは、試合の行方に直接的な影響を及ぼすだろう。

 アルゼンチン、クロアチア、モロッコとは対照的に、フランスはPK戦を経験せずに4強入りした。イングランドとの準々決勝はスリリングな展開となったが、2対1で逃げ切っている。

 攻撃の破壊力は今大会屈指だ。グリーズマン、エムバペ、デンベレ、ジルーのカルテットは、4人はもちろん2人でも、3人でも、攻撃を完結させることができる。「エムバペさえ抑えればいい」というわけにはいかないところが、対戦相手を悩ませている。

 グループステージ最終戦でチュニジアに苦杯をなめたものの、フランスの歩みは連覇を目ざすチームにふさわしい。CBキンペンペ、MFポグバ、カンテ、FWベンゼマらを欠きながらも、攻撃と守備が噛み合った戦いを見せている。フランスこそが優勝の本命、と予想する。(戸塚啓=スポーツライター)

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