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【コラム】戸塚啓

延期期間、延長の可能性も 財政的な支えも必要に

[ 2020年2月27日 17:00 ]

 難しい決断だったはずである。

 Jリーグが2月26日から3月15日までに開催予定のリーグ戦とルヴァンカップを、すべて延期することにした。新型コロナウイルスの感染拡大を避けるためである。

 選択肢は延期か、無観客試合か。リーグ戦が開幕したばかりの現時点で中止(開催しない)は考えにくいので、現実的に二者択一だっただろう。

 延期にすれば日程が厳しくなる。

 東京五輪の開催期間は中断するため、ただでさえ日程は詰まっている。3月、6月、8月末から9月上旬、10月、11月には、FIFAのインターナショナルウインドウが組まれている。

 政府の見解を重視しつつ世間の空気に敏感になれば、延期は止むを得ない。むしろ判断が分かれるのは、何試合を先送りするのかだっただろう。

 現時点のスケジュールを見ると、3月はすでに水曜日が埋まっている。4月、5月、6月にはいくつかの隙間があるものの、18年と19年には台風などの影響で7月以降に試合が延期されている。

 自然災害は今年も想定しておくべきだ。様々なリスクを勘案しておくと、日程に十分な余裕があるとは考えにくい。

 また、Jリーグのほとんどのクラブは自前のスタジアムを持っていない。平日開催に振り分けようととしても、すでに他のイベントの実施が決まっているスタジアムもあるかもしれない。

 代替日程でのスタジアムの確保と選手のコンディションの担保、さらにはACLや天皇杯との日程に整合性をつけ、観客の利便性にも目を配り、ひとまず3試合の延期に着地したと考えられる。

 そのうえで、Jリーグの村井満チェアマンは、「場合によってはさらに(延期の期間を)延長する可能性もある」と説明した。事態が収束に向かわなければ、さらに数試合を先送りしなければならないのは当然のことである。

 これ以上の先送りを避けたいとするなら、無観客試合が浮上する。そうなると、ホームゲームを開催する各クラブは収入減に直面する。

 休日の昼間のゲームが平日のナイターになるだけで、集客は確実に落ち込む。無観客試合をすることになれば、シーズンチケット購入者や広告掲出企業への一部払い戻しなどが必要になるだろう。試合当日のグッズや飲食などの売り上げも入ってこない。無観客試合によって日程の不安は多少なりとも解消されるが、財政面でのリスクは膨らむということである。

 いまこの瞬間の決断として、3試合の延期は英断だった思う。その先は事態の推移を注視しながら、追加の対応を考えていくしかない。Jリーグ側が強いリーダーシップを発揮することで、各クラブを財政的にも支えていってほしいと思う。(戸塚啓=スポーツライター)

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