【コラム】戸塚啓

スーパーリーグ騒動 構造的な変革を迫られているFIFA、UEFA、各国リーグ

[ 2021年4月28日 17:30 ]

欧州スーパーリーグ構想をけん引したレアル・マドリードのフロレンティーノ・ペレス会長
Photo By AP

 ビッグクラブの構想が、無残に砕け散った。

 イングランド、イタリア、スペインの強豪12クラブが、4月18日に『欧州スーパーリーグ』の創設を発表した。ところが、直接的に利害の対立する欧州サッカー連盟(UEFA)だけでなく、国際サッカー連盟(FIFA)やそれぞれの国の協会(あるいは連盟)とリーグ、さらには元代表選手や著名な指導者、現職政治家などから猛烈な反発を受けた。ファン・サポーターの拒絶反応も激しく、イングランドの6クラブが発表からわずか2日後の20日に脱退を表明した。翌21日にはスペインのアトレティコ・マドリー、イタリアのインテル・ミラノとACミランの3チームが撤退する。残ったのはレアル・マドリーとユベントス、それにバルセロナだけとなった。

 バルセロナとユベントスは声明を発表し、前のめりではない姿勢を明らかにしている。計画は破綻したと言っていい。

 スーパーリーグ構想の「肝」は、創設12チーム+3チームの合計15チームが、出場を保証されているところにあった。言い方を変えれば、この15チームはまとまった賞金を確実に受け取ることができる。

 ヨーロッパのビッグクラブは、ワールドクラスの選手を保有することでステイタスを維持し、ステークホルダーの期待に応えている。そのためには莫大な資金が必要で、財政基盤が万全なクラブばかりではない。

 タイトルを逃せば、「新たな選手を獲得せよ」との圧力が高まる。そしてまた、ビッグクラブは有力選手を奪い合い、移籍市場にお金を注ぎ込む。クラブライセンス制度で経営の健全化を図っているはずだが、実際に機能しているのはブンデスリーガのクラブぐらいではないか、と思える。

 スーパーリーグの実現を目ざした12クラブにとって、チャンピオンズリーグはより多くの収入を得る手段として物足りなかったのだろう。とりわけイングランドのクラブは、現行で「4」の出場枠を巡って、スーパーリーグ参加を表明した6つのクラブが争っている。6クラブ以外にも侮れないクラブがあり、今シーズンはリバプール、トッテナム、アーセナルが、来シーズンのチャンピオンズリーグ出場権獲得に苦戦している。つまりは、チャンピオンズリーグ出場に伴う賞金を計算できない状況に立たされている。これでは、新シーズンの戦力の整備にも影響が出てしまう。

 イタリア・セリエAでも、ユベントスとACミランが出場権を争っている。ユベントスがCL出場を逃すと、クリスティアーノ・ロナウドを引き留めるのは難しいようだ。

 スーパーリーグの創設によって、12のクラブは「チャンピオンズリーグに出られるのか、出られないのか」といったストレスから解放されることを望んだ。さらに言えば、精鋭が集うリーグというプレミア感を作り出すことで、より多くの利益を享受できると見込んだのだろう。

 今回の構想発表は、新型コロナウイスの世界的な大流行が引き金になった。もっとも、スーパーリ-グ構想は以前からあったものだ。有力な選手を獲り合う状況が変わらない限り、各クラブは選手人件費の確保に奔走する。チャンピオンズリーグとヨーロッパ各国リーグは、構造的な変革を迫られている。(戸塚啓=スポーツライター)

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