×

【コラム】戸塚啓

W杯のメンバー入りを巡る競争

[ 2022年6月30日 15:00 ]

モナコ入りが発表された南野拓実
Photo By AP

 去就が注目されていた南野拓実が、モナコへ新天地を求めた。

 昨シーズンまで所属していたリバプールでは、カップ戦が主戦場となっていた。ピッチに立てば結果を残していたが、それでも序列を変えることはできなかった。

 来る新シーズンは、カタールW杯に直結する。所属クラブでプレータイムを確保し、心身のコンディションを高いレベルで保つのは、W杯のメンバー入りの大前提だ。

 ザルツブルクとリバプールでプレーしてきた南野は、ヨーロッパにおいて無印の選手ではない。モナコでも新たな競争が待ち受けているが、即戦力としての期待は高い。定位置奪取へ向けたチャンスは与えられるはずだ。

 あとは、彼次第だろう。プレシーズンからゴールやアシストにこだわり、ピッチで躍動する姿を見せていくことで、未来が切り開かれていく。

 Jリーグからヨーロッパへ旅立つ選手も、出てくるかもしれない。鹿島アントラーズの日本代表FW上田綺世が、ベルギー1部のセルクル・ブルージュ入りに近づいている、と報じられている。

 ベルギー1部リーグでは、すでに数多くの日本人選手がプレーしている。日本人選手が一定の評価を獲得しているリーグだが、上田自身はヨーロッパでの実績がない。セルクル・ブルージュの一員となった場合は、「何ができるのか」を示していく立場だ。

 22-23シーズンのベルギー1部は、現地時間7月22日に開幕する。各チームはすでに、プレシーズンを過ごしている。開幕前のこの時期は、チームの戦術を消化していく時間であり、チームメイトとの相互理解を深める時間でもある。

 ストライカーの彼がW杯のメンバー入りするには、プレータイムの確保はもちろんゴールという結果が欠かせない。開幕前の準備に少しでも早く合流し、「こんなことができる」と見せていくことが、お世話になった人たちへの恩返しになり、W杯のメンバー入りを手繰り寄せることにもなる。

 欧州から日本へ戻ってくる選手もいる。鈴木武蔵だ。

 ベルギー1部のベールスホットが2部に降格したことで、今オフの去就が注目されていた。ベルギー1部のシントトロイデンや複数のJ1クラブが興味を示していたと言われているが、どうやらガンバ大阪の一員となるようだ。

 遠藤航や南野とともに16年のリオ五輪に出場した鈴木は、森保一監督指揮下の19年3月に日本代表デビューを飾った。欧州クラブ所属選手でチームが編成された20年10月、11月のテストマッチにも招集されている。しかし、21年以降は日本代表での出場がない。

 高さとスピードを併せ持つ鈴木は、大迫勇也や上田とタイプが異なる。浅野拓磨や古橋亨梧、前田大然らとも違う。W杯の登録メンバーが26人に増えたことを考えると、可能性を探ってみたい選手と言うことができる。

 W杯のメンバー入りを巡る競争は、終盤戦に突入している。すでにグループの輪郭は固まっているが、森保監督は「国内外を問わずにチェックしたうえで、最終的に選考していく」と話す。指揮官がギリギリまで悩むような競争が繰り広げられることで、チームの可能性も高まっていく。(戸塚啓=スポーツライター)

続きを表示

バックナンバー

もっと見る