【コラム】戸塚啓

久保 ビジャレアルで確実に増えるチャンス

[ 2020年8月13日 06:30 ]

 期待大の新天地決定だ。ビジャレアルへの期限付き移籍が発表された久保建英である。

 レアル・マドリードからマジョルカへ期限付き移籍した昨シーズンとは、スタートラインが明らかに違う。マジョルカにはシーズン開幕後に加入したが、ビジャレアルにはチームの始動から合流できる。アピールの機会も多く巡ってくるだろう。

 選手同士のコンビネーションという意味では、昨シーズンまで在籍している選手にアドバンテージがある。ただ、ビジャレアルは監督が交代した。新たな指揮官ウナイ・エメリの戦術を理解していく意味では、多くの選手が横一線からのスタートになる。チームメイトに後れを取ることなく、定位置争いに加われるのは大きい。

 昨シーズンのラ・リーガで、自分ができることを見せたのもプラス材料である。昨シーズン終盤のマジョルカの戦いぶりを見れば、背番号26を背負った日本人選手の潜在能力はすぐに分かる。エメリ監督はもちろんチームメイトも、久保の特徴はそれなりに把握しているだろう。スペイン語でコミュニケーションできることも手助けとなって、早い段階から相互理解を深めていけるはずだ。

 ラ・リーガで1シーズンプレーしたことにより、スペインのサッカーのリズムにも慣れている。これもまた、Jリーグからラ・リーガへ戦いの場所を移した昨シーズンとの大きな違いだ。

 彼自身の経験も見逃せない。久保にとってビジャレアルは、FC東京U-23から数えて7つ目のクラブになる。レアル・マドリードとレアル・マドリード・カスティージャはごく短期間の在籍だったが、未知の環境へ飛び込んだのは貴重な経験である。

 様々なクラブでプレーしたということは、それだけ多くの監督のもとでプレーしたことに他ならない。たくさんのチームメイトと同じピッチに立ち、お互いの良さを出すための連携も図ってきた。新しいチームに加わり、そのなかで自分の良さを出していく作業に、慣れていると言うことができる。環境に適応していく能力は、19歳という年齢以上に高いと考えていい。

 ビジャレアルは久保に続いてフランシス・コクラン、ダニエル・パレホの獲得も発表している。さらなる補強の噂もある。2シーズンぶりのヨーロッパリーグ参戦を見据え、各ポジションに複数の候補者を揃える陣容を整えるだろう。

 久保なしには攻撃が成立しなかった昨シーズンのマジョルカと異なり、チーム内のポジション争いは激しい。ただ、結果を残せる可能性はマジョルカより高い。

 マジョルカでは4得点4アシストに終わったが、シュートチャンスに恵まれていなかった。ラストパスを受けてゴールを狙うのではなく、ラストパスを出す仕事が圧倒的に多かった。

 最高のお膳立てをしても、アシストがつかないこともあった。チームメイトが決めきれないシーンが多かった。久保が作り出したチャンスの半分でも得点に結びついていれば、アシスト数は2ケタに達していた。

 しかし、ビジャレアルは違う。パスの出し手も、受け手もいる。昨シーズンのラ・リーガでは、バルセロナの86点、レアル・マドリードの70点に次ぐ63得点を記録している。久保がゴールやアシストを狙えるシーンは、昨シーズンより確実に増える。

 シーズン当初はスタメンより控えが多い序列かもしれない。それでも、目の前の課題をひとつずつクリアしていける裏付けを、久保はすでに揃えていると思うのだ。(戸塚啓=スポーツライター)

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