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【コラム】戸塚啓

強化のスピード感 W杯ベスト16の壁を破るため

[ 2019年9月3日 18:30 ]

<サッカー日本代表練習>円陣が始まる直前までボールを触ろうとする久保(左から2人目)(右から4人目は森保監督)(撮影・西海健太郎)
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 森保一監督は、ベストメンバーで臨むことを選んだ。

 9月5日にパラグアイとテストマッチを戦い、同10日にミャンマーとのW杯2次予選に臨む日本代表のメンバーは、現時点でベストと言ってもいい顔ぶれとなった。23人のうち19人までが、海外クラブ所属選手である。

 ヨーロッパ各国のシーズンは幕を開けたばかりである。新シーズンから所属クラブを変えた選手にとっては、ポジション確保のための重要な時期だ。

 それだけに、招集を見送っていい選手がいるのでは、との声も上がっている。

 所属クラブで試合に出場することは、日本代表に選ばれる大前提だ。クラブでしっかりとプレータイムを刻むことで、代表で活躍できる準備が整う。

 一方で、日本代表は活動期間が限られている。

 今回は6月以来の集合だ。トリニダード・トバゴ、エルサルバドルと対戦した6月の2試合に、吉田麻也と遠藤航らは出場していない。彼らが森保監督のもとで最後にプレーしたのは、今冬のアジアカップまでさかのぼる。

 また、トリニダード・トバゴ戦では3-4-3のシステムにトライした。続くエルサルバドル戦ではこれまでと同じ4-2-3-1で戦ったが、長友佑都や酒井宏樹はエルサルバドル戦をベンチから見つめた。チームのベースとなる4-2-3-1のシステムで、森保監督の構想の中心となる選手が揃ってプレーしたのは、アジアカップが最後なのである。

 W杯まではあと3年以上の時間がある。だが、これまでどおりのカレンダーなら、開催前年の2021夏まではほぼ予選に費やされる。カタールW杯はこれまでの6月開幕ではなく11月スタートだが、W杯予選突破以降の強化期間は1年ほどしかない。

 だとすれば、格下相手のW杯2次予選もムダにできないだろう。2次予選と最終予選を通してチームの土台をより強固なものとし、誰が出場してもチームの軸がブレないところまで持っていき、なおかつ戦術的なオプションもそれなりのレベルへ押し上げておきたい。

 予選を戦いながらオプションまで見据えるのは、欲張り過ぎと感じられるかもしれない。だが、これまでと同じ強化スケジュールでは、ベスト16の壁を破ることはできない。これまでよりも強化のスピード感を上げることで、たとえばリスタートのオプションを持てるようにまでなっておきたい。18年のロシアW杯でベスト4入りしたイングランドは、アメリカンスポーツの流れを受けた分析とパターン構築により、リスタートから多くの得点を記録している。

 W杯2次予選の対戦相手は、間違いなく格下だ。ベストメンバーで臨まなくても勝てるだろうし、勝たなくてはいけない相手である。しかし、「勝って当然」と思われる相手をしっかりと退けるのも、実はとても重要なのである。(戸塚啓=スポーツライター)

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