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【コラム】戸塚啓

井手口の欧州移籍 自らの存在価値を示すこと

[ 2017年12月16日 08:00 ]

日本代表MF井手口陽介(G大阪)
Photo By スポニチ

 井手口陽介は移籍するのだろうか。獲得に乗り出していると見られるリーズ・ユナイテッドのおひざ元イングランドでは、移籍金の具体的な額まで報道されているようだ。

 イングランド2部に相当するチャンピオンシップ所属のリーズだが、90年代後半から2000年前半の躍進は眩しい。のちにイングランド代表の主軸となる若きリオ・ファーディナンドがいて、オーストラリア代表のハリー・キューエルとマーク・ヴィドゥカが全盛期を過ごしたチームは、チャンピオンズリーグでベスト4入りしたこともある。その後は財政難に陥って表舞台から姿を消したが、偉大なOBを輩出したクラブであることに変わりはない。ホームスタジアムのエランド・ロードにピッチに井手口が立つことに成ったら、日本人としてとても誇らしいと僕は思う。

 井手口がリーズの一員になっても、戦いの舞台はひとまず欧州の他国リーグになる。国際Aマッチの出場数が少ない彼は、英国内の就労ビザ取得の条件を満たせていないからだ。

 それはともかく、ロシアW杯直前のオフである。Jリーグを離れることのリスクが、どうしても囁かれる。リーズからレンタルされたクラブで出場機会を得られなければ、ゲーム体力やゲーム勘に不安を抱えることになってしまう、と。

 4年前のこの時期には、大迫勇也が欧州へ飛び出していった。13年のJ1リーグではキャリアハイの19ゴールをマークしており、13年11月の欧州遠征ではオランダ相手にゴールも決めていた。当時のアルベルト・ザッケローニ監督へのアピールは着実で、鹿島アントラーズに所属したままでもブラジルW杯のメンバー入りは射程圏にあった。

 それでも、大迫はドイツ・ブンデスリーガを選んだ。2部の1860ミュンヘンの一員となり、15試合出場6ゴールの実績を残した。直近のW杯を念頭に置いたチャレンジは成功し、彼はブラジルでピッチに立った。

 それだけではない。1860ミュンヘンは1部昇格を逃したが、大迫はケルンへ引き抜かれた。ケルンでFWの軸となっている現在のキャリアは、1860ミュンヘンでの半年間を起点としている。

 井手口はどうだろう。リーズへの移籍が正式に決まるのか、決まったらどこへレンタルされるのかはともかく、不安を感じる必要はないのではないか。

 理由はポジションにある。井手口が定位置とするボランチは、試合途中からの交代が少なくない。ボールに関わっていく警告累積のリスクも小さくはない。スタメンを勝ち取ることができなくても、途中出場やバックアップとしてピッチに立つ機会が見込みやすい。

 プレースタイルもある。ボールを奪い取ることに優れる井手口なら、どこの国のリーグで、どんなチームでも、どんな監督でも、戦力として考えるだろう。彼自身が課題にあげてきた攻撃への関わりについても、眼に見える進歩がある。

 あとは、井手口が自らの存在価値を示すことができるどうかだ。欧州へ飛び出し行くことへのリスクはあるが、メリットは間違いなくある。(戸塚啓=スポーツライター)

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