【コラム】戸塚啓

久保 移籍で得た未知の環境に適応していく能力

[ 2021年1月22日 06:00 ]

<ヘタフェ・ウエスカ>試合終了後、ウエスカの岡崎慎司(左)と肩を組むヘタフェの久保建英
Photo By 共同

 久保建英が流れに乗りつつある。

 ビジャレアルからヘタフェへ移籍した直後の現地時間1月11日、対エルチェ戦で後半途中から出場すると、自身の左足シュートから2対1となる得点が生まれた。PK奪取につながるクロスも供給した。

 現地時間20日夜に行なわれたウエスカ戦では、2列目の右サイドで先発に名を連ねた。ヘタフェの情報を持たずにこの試合を観た人は、背番号5を着ける日本人選手が加入したばかりと思わなかっただろう。ほぼ同じタイミングで加入したトップ下のアレニャと、スムーズなコンビネーションを見せていた。

 同サイドのボランチとサイドバックとは、前半に相手ボールの局面でややぎこちなさを感じさせた。とはいえ、リアクションとなる守備では想定内の現象だ。むしろ、時間の経過とともに攻守で相互理解を深めていったことを評価したい。右サイドバックのダミアン・スアレスとは、マジョルカでのポソと同じような連携を築けそうだ。相手を使い、自分も使われる関係性である。

 ビジャレアルはリーグの上位で、ヘタフェは中位から下位に位置している。しかし、1部復帰後の過去3シーズンのヘタフェは8位、5位、8位と、ひと桁順位でフィニッシュしている。ビジャレアルからの移籍を都落ちと表現する記事もあったが、そこまで大きな落差はない。少なくとも、昨シーズン在籍したマジョルカよりは、明らかに競争力が高い。

 より多くのプレータイムを求めた移籍であることは、久保自身も言葉にしている。その意味で、いいチームを選んだと思う。

 大まかに分類すると、ビジャレアルは「個」の特徴が強く打ち出されるチームだった。コンビネーションが追求されていないというわけではなく、「個の粒」が大きいのでひとりで局面を打開できる選手が多いのである。

 それに対してヘタフェは、「個」よりも「連携」や「連動」を活用する。個人で局面を打開するアクションはもちろんあるが、ビジャレアルより選手同士が関わって崩していく印象だ。

 久保はドリブルやパスで違いを生み出せるが、前提となっているのは適切な状況判断だ。自分がやり切るべきならそうするし、チームメイトを使うべきなら迷わず使うところに、この19歳の良さがある。エゴイスティックでなく、他人任せでもない。相手守備陣に個人で決定的なダメージを与えられるだけでなく、適切な位置と角度でパスワークに顔を出し、ボールの循環をスムーズにすることができるのだ。周囲の良さを引き出せる久保の特徴が、ヘタフェではより発揮されていくに違いない。

 それにしても、移籍決定からまだ10日ほどである。新天地には自身と同じバルセロナの下部組織で育ったアレニャとククレジャがいて、スペイン語でコミュニケーションが取れるとしても、素早くフィットしたことに驚かされる。19歳にしてすでに多くのクラブでプレーしてきたことで、新しい監督やチームメイトとの向き合い方を学んでいるからだろう。未知の環境に適応していく能力の高さが、ピッチ上でのプレーを際立たせている。(戸塚啓=スポーツライター)

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