【コラム】戸塚啓

さらなる繁栄をもたらすのか それとも、デメリットがこぼれ落ちてくるのか

[ 2017年1月13日 06:00 ]

FIFAのインファンティノ会長
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 国際サッカー連盟(FIFA)が、W杯の出場国を増やすことを決めた。2026年の大会から、48か国による開催となる。

 思い返せば、日本が初出場した98年大会も、「24」から「32」に出場国が増えたタイミングだった。アジアの出場枠はそれまでの「2」から「3・5」となり、岡田武史監督が率いた日本は第3代表としてフランスへたどり着いたのだった。

 一気に16か国増となる今回の拡大によって、大陸ごとの出場枠はどうなるのだろう。

 欧州や南米の出場国が増えることは、大会のレベルを担保することにつながる。大陸ごとの力関係を見極めつつ、予選の参加国数も判断材料に加えられるはず。40をこえる国と地域が参加するアジアも、恩恵を受けるのは確かだ。

 これからサッカーが盛んになっていくであろう国々をW杯へ招き入れ、この競技の国際的な地位をさらに高めていくのは、大会拡大に寄せるFIFAの思惑のひとつだ。そして、国としてのポテンシャルを秘めた東南アジア諸国やインドなどに、FIFAは魅力を感じている。

 アジアの出場枠が増えれば、この地域における日本の立場はより安定したものとなる。予選でハラハラドキドキさせられることも、なくなっていくだろう。

 たとえば、アジアから6か国が出場できるようになり、最終予選の方式が今回と同じなら、6か国のグループで3位に入ればいい。8か国が出場できるなら、グループ4位で出場できる。五分々々の星勘定でも良さそうだ。

 それは、日本のためになるのだろうか。

 僕の周りには、W杯ロシア大会の最終予選を楽しんでいる人が少なくない。UAEとの初戦に敗れたことで、一戦一戦の重みが増していったからだ。アジア相手の予選では拳に力が入らなくなっていたが、今回は危機感があるので観戦に熱がこもる、という知り合いが意外なほど多い。

 最終予選で苦しむことの是非はともかく、簡単には手の届かない舞台だからこそ、地域予選から熱を帯びた戦いが繰り広げられる。歓喜と悲劇が世界各地で交錯し、本大会の序章として報道されていく。W杯が開幕する前から、見る者をひきつけるのだ。

 勝つか負けるかのスリリングな攻防は、当事者たちにも必要だろう。難しい相手を退けたことでつかむ自信は、W杯へ臨むチームの支えとなるからだ。アジアの予選突破に苦労しないということは、チームも、個人も、成長のチャンスが減ってしまうことを意味する。

 チームとしての競争力を地域予選で磨くことができず、そうかといって、独自に強化をするには国際Aマッチデーが障壁となる──出場枠の拡大でアジアや北中米カリブ海のような第三極の国が登場しても、チームの強化がままならなければあっさりと負けてしまうだろう。新興国がW杯に出場できるチャンスを広げることで、欧州と南米が牽引する力関係がさらに加速するかもしれない。

 FIFAの構想によれば、48か国になってもW杯の開催期間は変わらないという。同じスケジュールで試合数が増えれば、選手の負担は大きくなる。名勝負は生まれにくくなるだろう。

 出場国の増加がレベルダウンを招くとの懸念が現実となり、W杯という大会の権威も揺らいでしまう。メリットとデメリットが均等になるとはそもそも思えないが、いまのところはマイナス要素が目につく気がするのだ。(戸塚啓=スポーツライター)

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