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【コラム】戸塚啓

コスタリカ戦 好結果の要因は? 日本人の良さをしっかりと落とし込んでいくサッカー

[ 2018年9月12日 20:00 ]

国際親善試合   日本3-0コスタリカ ( 2018年9月11日    パナS )

コスタリカ戦に臨む日本代表イレブン
Photo By 共同

 9月11日にコスタリカと対峙した日本代表は、とにかく楽しそうだった。

 森保一監督の初陣を飾ることはできたが、自分はまだ代表に定着しているわけではない。結果を残さなければいけない立場だ──ほとんどの選手はそんなメンタリティを胸に刻んでいたはずだが、だからといって緊張感に包まれることはなかった。

 テクニカルエリアで戦況を見つめる森保一監督を気にすることもなく、一人ひとりの選手が持ち味を発揮していく。コンビネーションが少しぐらい合わなくても、はつらつとしたプレーが前向きな空気を作り出していた。

 なぜ仕掛けない、なぜ打たない、といったストレスは、ほぼ皆無だった。選手が楽しんでプレーすれば、観ている我々も心が躍る。

 日本代表と同じように世代交代をはかるコスタリカは、FIFAランキングこそ上位だが格上ではない。3対0という勝利に差し引かなければならないところがあるとはいえ、選手たちが伸び伸びとプレーしたこと、その雰囲気を作り出した森保監督のマネジメントは、評価されていいはずである。

 新監督の初陣という意味では、中田英寿、中村俊輔、小野伸二、稲本潤一の“黄金の4人”とともに船出したジーコのチームや、メッシ擁するアルゼンチンを撃破したザックのチームの立ち上げを思い起こさせる。ただ、ジーコもザックも、前監督の主力をほぼそのまま起用していた。国際Aマッチ出場数がひとケタの選手が8人もいた森保監督のチームとは、選手の背景が全く異なる。先のロシアW杯に出場した選手がほぼいなかったことを考えても、新鮮味に溢れていた。

 こうなると、10月のテストマッチが楽しみになってくる。

 今回は招集を見送られた香川真司、乾貴士、原口元気らは、コスタリカ戦でアピールに成功した中島翔哉、南野拓実、堂安律とポジションが重なる。久保裕也や宇佐美貴史もいる。清武弘嗣の完全復活も待たれる。2列目の競争は激しい。

 長谷部誠が代表から引退したボランチには、ロシアW杯で評価を高めた柴崎岳がいる。森保監督が主将に指名した青山敏弘、コスタリカ戦でボランチとしての資質を再認識させた遠藤航、今回はケガで辞退した山口蛍らを加えたポジション争いも見どころは多い。

 その上で触れるべきなのは、森保監督が示した方向性だろう。

 自身の代名詞と言ってもいい3−4−2−1ではなく、コスタリカ戦では4−4−2とも4−2−3−1とも取れるシステムを採用した。ロシアW杯で采配を揮った西野朗前監督が用いたオーガナイズと同じである。

 これまでのように監督交代でシステムも変わるのではなく、前監督のサッカーを土台としてチーム作りを進めていくということだ。表現方法を変えれば日本人の良さをしっかりと落とし込んでいくサッカーで、実はそれこそが選手たちを躍動させた最大の理由だと思うのである。(戸塚啓=スポーツライター)

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