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【コラム】戸塚啓

ACL鹿島敗退 カレンダーの見直しを

[ 2020年1月30日 19:30 ]

 「4」ではなく「3」なのは、史上初めてになる。

 1月28日に行われたAFC(アジアサッカー連盟)チャンピオンズリーグ(以下ACL)のプレーオフで、鹿島アントラーズがメルボルン・ビクトリー(オーストラリア)に0対1で敗れた。ACLに最大4チームが出場できるようになった2009年以降で、グループリーグへ進出できないクラブが出たのは今回が初めてである。

 09年から14年までは4チームがストレートインできたが、15年から1チームがプレーオフにまわることとなる。これにより、プレーオフ出場クラブは慌ただしい準備を迫られてきた。

 15年以降のプレーオフ出場クラブのなかでも、今シーズンの鹿島は際立ってオフが短かった。19年シーズンの締めくくりとなる元旦の天皇杯決勝を戦ってから1カ月も経たないうちに、彼らは20年シーズンのスタートを切った。切らざるを得なかった。

 Jリーグではシーズン開幕までに5週間から6週間を充てるクラブが多く、それでもプレシーズンとリーグ戦では様々な違いに直面する。プレシーズンに仕上がりの良さを印象づけたチームが、リーグ戦で快調な滑り出しを見せるとは限らない。恐ろしく残酷なスケジュールを強いられ、鹿島は敗れてしまったのだった。

 メルボルン・V戦後の鹿島の選手たちは、言い訳の言葉を一切口にしていない。常勝を義務づけるクラブならではの矜(きょう)持である。彼らのプライドと責任感には敬意を表したいが、これはもう鹿島だけの問題ではない。

 カップ戦で勝ち上がるとオフの突入が遅くなるのは、ヨーロッパ各国のリーグでも起こり得る。ただ、天皇杯で勝ち進むとオフが削られてしまうJリーグのクラブと異なり、オフ突入が遅くなるというイメージだ。

 「元旦、国立」はサッカー関係者にとって大きな名誉と理解されてきたが、天皇杯で勝ち上がるとオフが短くなる歪みは、かねてから無視できなくなっている。決勝戦を戦った鹿島とヴィッセル神戸だけでなく、昨年12月21日の準決勝に挑んだ清水エスパルスとV・ファーレン長崎も、かなり変則的なスケジュールを過ごすことになった。

 これまで元旦決勝の根拠となっていたクラブW杯の12月開催は、2020年で最後となる。21年シーズン以降は、12月のカレンダーを空けなくていい。

 ならば天皇杯を12月中に終わらせる、というだけでは物足りない気がする。国内のカレンダーそのものを、改めて考えなおすべきではないだろうか。

 8月あるいは9月をシーズン開幕とし、翌年の4月から5月までに国内カレンダーを収めるヨーロッパの平均的なカレンダーにならうことには、メリットとデメリットがある。デメリットの最たるものは、降雪量の多い時期のリーグ戦開催だ。ウインターブレイクを設けたとしても、予定どおり消化できない試合が出てしまうかもしれない。

 とはいえ、現行のカレンダーがベストでもない。

 蒸し暑さの激しい夏の試合は、ゲームのクオリティを担保できなくなっている。プレイヤーズ・ファーストで考えるなら、猛暑が例外でなくなってきた夏は、少しでも試合を減らすべきだろう。

 AFCというマーケットでは、日本サッカー界全体でプレゼンスを高めていく必要がある。ACLの出場枠は、日本代表とクラブの実績に基づいたランク付けで配分される。

 今シーズンのACLなら横浜F・マリノス、FC東京、神戸の出場3チームが、鹿島のプレーオフ敗退を穴埋めする成績を残してくれればいい。だが、3チームが揃って上位進出を逃すようなことになると、今シーズンの結果がのちに響いてくる。

 はっきりしているのは、カレンダーの歪みを各クラブの努力でカバーするのは、長期的に見れば日本サッカー全体の不利益になるということだ。このままカレンダーを変えなければ、今回の鹿島のような痛みが繰り返されるだけでなく、すでに絶対的ではないアジアにおける地位はさらに揺らいでしまう。(戸塚啓=スポーツライター)

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