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【コラム】戸塚啓

過去のUCL決勝ベストゴール 17-18ギャレス・ベイル(レアル・マドリード)

[ 2019年5月30日 07:00 ]

UEFAチャンピオンズリーグ   レアル・マドリード3-1リバプール ( 2018年5月26日    NSCオリンピスキ(キエフ) )

レアル・マドリードMFギャレス・ベイル
Photo By AP

 UEFAチャンピオンズリーグ(UCL)は、ビューティフルゴールのショーケースだ。語り継がれる得点は決勝戦に限らないが、勝負を決めたスーパーショットは記憶というより網膜に刻まれたかのようである。あの日、あの時、あの場所で生まれたゴールが、瞼を閉じれば映像として再生される。

 17-18シーズンのファイナルで、レアル・マドリードのギャレス・ベイルが決めたオーバーヘッドは唯一無二の輝きを放つ。得意の左足から繰り出された鮮やかな軌道は、リバプールのGKロリス・カリウスにノーチャンスの一撃だった。

 16-17シーズンのユベントス対レアル・マドリード戦で、マリオ・マンジュキッチが見せた右足ボレーも芸術的だ。ゴンサロ・イグアインからパスを受け、胸トラップと同時に身体を倒しながら右足でボールを叩く。寄せてきたDFもGKも関われないように、絶妙なコースへコントロールされたシュートだった。

 どうやら僕はボレーシュートが好きなようだ。そうなれば、01-02シーズンのジズーことジネディーヌ・ジダンのゴールに触れないわけにはいかない。レアル・マドリードの一員としてレバークーゼンとのファイナルに臨んだ彼は、1対1で迎えた45分にスタジアムの視線を、世界中のサッカーファンの視線をくぎ付けにする。

 左サイドバックのロベルト・カルロスがタッチライン際を駆けあがり、ゴール前へふんわりとしたクロスを入れる。加入1シーズン目のレアル・マドリードで見慣れない背番号5を着けるジズーは、身体のひねりを利かせて左足でボールをとらえる。

 「矢のような」とか「目にも止まらぬ」といった表現は、ジダンのこのシュートにこそふさわしい。GKハンス=イェルク・ブットは、正面よりやや右にポジションを取っていた。GKから見て右上を襲ってきたシュートは、手を伸ばせば届いたはずである。ところが、ブットの両手は虚しく空を切る。ジダンの左足ボレーは、瞬く間にゴールネットを揺らしたのだった。

 00年初頭のサッカー界は、19年現在に比べればゆったりとした印象を抱かせる。ゴール前にもスペースがある。ペナルティ内からシュートしたジダンも、DFのプレッシャーを受けていなかった。

 だからといって、ジダンのゴールの価値が損なわれることはない。力みのない完璧なフォームから繰り出されたボレーは、UCLだけでなくレアル・マドリードの歴史においても眩しい。母国フランス代表やユベントスでもビッグタイトルをつかんだ彼のキャリアにおいても、特別な意味を持っているに違いない。

 ジダンのゴールが決勝点となり、レアル・マドリードは2対1でレバークーゼンを退けた。クラブにとって9度目の欧州制覇は、ジダンにとって初めての栄冠でもあったのだ。

 UCLのゴールは、時をこえて価値を持つ。今シーズンのファイナルでも、5年後、10年後、20年後まで語り継がれるゴールが生まれるのだろう。(戸塚啓=スポーツライター)

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