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【コラム】戸塚啓

万全ではなかったイタリア 決めきれない事実を重く受け止める

[ 2013年6月22日 06:00 ]

<日本・イタリア>試合後、渋い表情のザッケローニ監督と喜ぶイタリア代表
Photo By スポニチ

コンフェデ杯1次リーグA組 日本3―4イタリア
(6月19日 レシフェ)
 この驚きを何と表現すればいいだろう。この悔しさをなんと表現すればいいだろう。

 6月19日に行なわれた日本対イタリア戦は、最高にスリリングでエキサイティングなゲームとなった。積極的な姿勢を自ら封印してしまったブラジル戦から一転して、この日は序盤から果敢な姿勢を貫いた。怖がらず、諦めず、貪欲なまでにボールに食らいついた。

 イタリアは日本より試合間隔が短い。コンディションでは上回っていた。だとしても、勝利に餓えた思いが、ゲームを動かす強力なエンジンとなったのは間違いない。

 ひとつ目のポイントは、イタリアの1点目にあっただろう。日本が2-0とリードして迎えた41分に、CKから失点を喫した。前半を2-0のまま終えていれば、ゲームの行方はまったく違うものになっていたはずだ。ここでゴールを喫したことで、試合の行方に不確定さが入り込んできた。

 スコアこそ異なるが、僕は06年W杯ドイツ大会のブラジル戦を思い返した。前半終了間際にロナウドの同点ヘッドを許さなければ、ドルトムントの夜は歓喜に包まれていたかもしれなかった。1-1に追いつかれた日本は、53分と59分の失点でブラジルに突き離された。イタリア戦も似たような展開である。後半開始早々の2失点で、あっという間に試合を引っ繰り返された。

 7年前のブラジル戦と違ったのはそのあとだ。岡崎の鮮やかなヘッドで同点に追いつくと、その後も本田のフィニッシュがブッフォンを脅かした。長谷部のミドルが際どくゴールを襲った。岡崎のシュートがポストを叩き、香川のヘッドがバーに嫌われた。3-3としたあとの好機を4点目に結びつけていれば、日本は勝点3をつかんでいたはずだ。

 日本には傑出したストライカーがいない。だからこそ、チャンスの数で勝負していくしかない──ワールドカップに出場するようになった90年代末から、日本サッカーの方向性として認識されてきたものである。

 2013年現在も、ストライカーに恵まれているとは言い難い。一方で、世界で勝負できる個人は現われている。イタリア相手にも、決定的なチャンスを作り出せるレベルにまで到達してきた。

 だとすれば、接戦に納得するのは終わりにするべきだ。決めきれない事実をこれまで以上に重く受け止め、より高いレベルを要求していかなければいけない。

 スリル満点の攻防が繰り広げられたものの、結局はイタリアに屈した。得点はリスタートとその流れからに止まり、万全ではないイタリアに4失点を喫した現実から、1年後のワールドカップを見据えていくべきである。もっともっと高い要求を、このチームには課していくべきだと思うのだ。(戸塚啓=スポーツライター)

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