【蹴トピ】J1で快進撃!町田を世界へ 藤田晋社長に聞く将来のビジョン「夢物語ではなくなってきた」
J1初挑戦中のFC町田ゼルビアが破竹の快進撃で話題を集めている。序盤から常連クラブを次々に破り、第12節を終えて堂々の首位。藤田晋社長兼CEO(50)に、今季の戦いぶりに対する感想や、将来のビジョンについて聞いた。(聞き手・矢吹 大祐)
奇跡的な快進撃に、幾多の成功を収めてきた藤田氏でも実感が追いつかない様子だ。
「正直こんなことある!?という感じ。もちろんそんなに甘くないとは思っていたが、シーズン約4分の1を終えて首位にいるのは全く想像しなかった」
プロ経験のない黒田剛監督を招き、昨季J2で独走V。極めて異例の抜てきでサッカー界の常識を覆した。
「選手の力を引き出している意味を含め、やはり黒田監督の指導力が大きい。言葉が豊富だし、負けないために全てをやり尽くす“徹底力”を感じる」
今季の目標を「5位以上、ACL出場権獲得」と設定した。
「当初はJ2に戻ることだけは絶対避けよう、という話だった。そこから戦力補強が進み半分の10位以上となり、いつの間にか監督が5位以上と上方修正していた(笑い)」
J2から初昇格したクラブの最高順位は12年の鳥栖で5位。Jリーグの歴史を塗り替える偉業を期待する声も上がり始めた。
「夢物語ではなくなってきた。研究されるという人もいるけど、黒田監督はそれを上回る準備を怠らない人。いい戦いができそう」
魅せるプレーより相手の嫌がることを徹底し、勝利を追求するスタイルには批判的な声もある。だが「そういうものは時が解決すると思っている。話題にならないよりは、ざわついているのは僕にとってありがたいこと」と気にしていない。
町田がJ2で上位争いしていた18年秋に経営参画。オーナーとしてスタジアムや練習場の環境面をJ1仕様に引き上げ、22年末に経営速度を上げるべく自ら社長に就任した。
「J2の昨季からJ1クラスの人件費で勝負をかけた。上がると今度は落ちないようにとなり、今季は少なくともJ1中堅レベル。(夏の補強も)勝ち抜くために手薄なところをどうするか、監督や強化と話していく」
親交のある三木谷浩史会長の神戸は国内外のスター選手を軸にチームを強化しJ1を初制覇した。優勝への道筋をどう考えるか。
「リーグの価値を上げるためにそういう選手を連れてきてほしいとJリーグからの期待も感じるので応えたい気持ちもある。ただ、スター選手を並べれば勝てるわけではない。そこはリアリストとして勝てる布陣を考えながら投資に見合うかどうかが大事になる」
将来的にはどんな方向を目指すのか。シーズンを走りながら、クラブ戦略にも考えを巡らせている。
「有力選手が次々と海外に出ていく現状に合わせるなら、オランダのアヤックスのような育成型となる。アカデミーを強化していく方針はあるけど、それを徹底的にやって、売却(移籍金獲得)を中心にしていく方向が正しいかは分からない。経営的な感覚では、売却したら残らないというところが大きく、まだ迷いがある」
クラブのビジョンとして「町田を世界へ」を掲げている。
「サッカーに参戦した時から、ACL優勝を目標にしてきた。元々、僕の目を町田に向けさせてくれた本田圭佑くんは“世界から見れば町田は東京だ”と言っていた。名前をとどろかせば、世界的な選手が東京のクラブに来たいと集まってくるはず。世界から見た時に、町田をみんな知っているという状態を目指していく」
本業のIT大手サイバーエージェント社長として22年、巨額を投じW杯カタール大会の放映権を獲得。「ABEMA」で全試合の中継を無料配信し、全国のファンから感謝された。ビジネスとしての勝算以上に、好きなものをとことん突き詰める。町田で勝利を目指す原動力も根底に流れるものは同じだろう。
「結局、仕事が寄ってくる。いざ始めれば周辺でビジネスが広がっていく。無邪気に好きなものをやっていくのが一番いいのかな」
【月間MVP平河けん引 堅守&ロングボールで快進撃】
町田は第2節の名古屋戦でJ1初勝利を挙げ、第4節の札幌戦まで3連勝して首位に初浮上した。強度の高い守備を重視し、ボール保持にこだわらずロングボールを多用するなど、異端ともいえるスタイルで勝ち点を積み上げている。初昇格でオフにDF昌子やGK谷ら、代表やJ1経験の豊富な選手を補強した。そこにU―23日本代表としてパリ五輪出場権獲得に貢献したFW平河やFW藤尾ら若手が成長し、チーム力が底上げされている。特に両サイドの攻撃を担う平河はスピードと突破力が評価されブレーク。快進撃の象徴として2・3月度のリーグ月間MVPを受賞した。
◇藤田 晋(ふじた・すすむ)1973年(昭48)5月16日生まれ、福井県出身の50歳。青学大卒。98年にサイバーエージェントを設立し、代表取締役社長。馬主として所有するフォーエバーヤングが4日(日本時間5日)に行われた米G1ケンタッキーダービーで日本馬同レース史上最高の3着に入った。
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