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【コラム】海外通信員

育成部門の充実 アタランタの成功

[ 2017年1月26日 17:00 ]

ユベントスも狙っていると噂されているアタランタの22歳DFマッティア・カルダーラ(右)
Photo By AP

 今シーズンのセリエAで、前半戦をかき回したクラブがある。アタランタだ。若い選手を使いながら、戦力ではるかに上回る強豪を次々となぎ倒し、第21節を消化した時点で1試合少ないミランを上回る6位にいる。

 開幕戦はラツィオに3−4で敗れ、その後は6戦で2勝4敗と冴えない数字。今シーズンから就任したジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督には解任の話も持ち上がっていた。第7節、強豪ナポリ戦で彼は賭けに出た。マッティア・カルダーラ、ロベルト・ガリアルディーニ、アンドレア・コンティ、アンドレア・ペターニャといった22歳以下の選手を4人も先発させたのである。しかもこのうち2人は、セリエAにデビューして間もない若者である。「このスタメンを前日にアントニオ・ペルカッシ会長に伝えたら、夜も眠れないくらいに心配していたらしい」とガゼッタ・デッロ・スポルトのインタビューで明かしていた。しかし「練習を見て問題ないと判断した」というガスペリーニの期待に応えて、若者たちは躍動した。カルダーラはゴール前でボールを次々はじき返し、ガリアルディーニは中盤で2、3人分の仕事をし、強力なナポリの左サイドを前にしてコンティは勇敢に走り、そしてペターニャは決勝ゴールを決めた。結果は1−0、相手がターンオーバーでメンバーを落としたこともあったが、彼らはジャイアントキリングを果たした。

 そこから、劇的な飛躍が始まった。フィオレンティーナと引き分け、インテルを撃破し、好調だったジェノア、ヨーロッパリーグに進出したサッスオーロにも勝ち、ついにはローマをも倒して順位は5位に上がった。第15節でユベントスに敗れてやや小休止したが、そのまま上位をキープして現在に至る。その間、前述の若い選手たちは戦力として定着し活躍した。中でもカルダーラやガリアルディーニは、この冬にビッグクラブとの契約が決まったのだ。カルダーラはユベントスとの契約にサイン。アタランタで18年までプレーし、そのあと移籍する。ガリアルディーニは、既にインテルに移籍(18年まではレンタルで、その後は完全移籍)し、早くも主力として定着している。他にも19歳ながらコートジボアール代表に選ばれているフランク・ケシエや、視野の広い24歳のスイス人レモ・フロイラーらの若手外国人選手も評価を上げている。

 アタランタ自体は、若手の発掘に慣れたクラブだ。優秀な育成部門を誇り、国内外で活躍する出身選手は枚挙にいとまがない。有名なのは02W杯のメンバーだったクリスティアーノ・ドーニ、ミランの現主将のリッカルド・モントリーボ、ほかにもジャンピエロ・パッツーィニ(現エラス・ベローナ)、ジャコモ・ボナベントゥーラがこのクラブの出身だった。しかし今季は、複数の若手が堂々とトップチームの柱を担っている点が今までと異なる。若手育成や人材発掘に定評のあるガスペリーニ監督のもと、大胆な若手重視の姿勢が取れたということだ。

 今イタリアでは、アタランタの成功例にならってスカウトや育成部門を充実させるクラブが増えてきている。ミランもそんな感じになってきているが、自前の組織で育てた選手たちを中核とするクラブの数は、今後増えそうだ。(神尾光臣=イタリア通信員)

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