【芸人イチオシ】M―1ウエストランド優勝のポイント 順番、出囃子の長さ把握、錦鯉・渡辺からの一言…

[ 2022年12月24日 18:37 ]

M―1王者となったウエストランドの井口浩之(左)と河本太
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 人気コンビが予選で姿を消し、本命なき大会と言われた「M―1グランプリ2022」で7261組の頂点に輝いたのはウエストランド。このダークホースが、悪口漫才で勝利を掴んだ背景には4つのポイントがあったように感じられた。

 1つ目は井口浩之(39)のかわいらしさ。全方位に毒を吐いた男に「かわいい」という言葉は似合わないかもしれないが、1メートル57の身長で、赤いチェックのスーツを着る姿は、どこからどう見ても威圧感がない。チワワが「キャンキャン」吠えても怖くないように、どれだけ悪口を言ってもドン引きされることもなく「負け犬の遠吠え」として許されてしまう。体格が大きかったり、爽やかなルックスだったら、毒舌が視聴者に不快感を与える可能性はあっただろう。この絶妙な「小物感」が芸人としての武器になっている。

 最終決戦3組の中で唯一タイミングよくネタを始められたこともポイントの一つだ。M―1決勝はファーストラウンドと最終決戦で登場時の出囃子の長さが違い、最終決戦の方が若干短かった。

 さや香とロングコートダディは出囃子が鳴り終わるタイミングを把握しないまま、センターマイクに向かったとみられ、3秒ほど無音の時間があった。このエアポケットが微妙な間を生む結果になった。一方のウエストランドは出囃子が鳴ってる最中に階段を下りだして「どうも~」と、間をあけず、被せるようにネタに入っていった。

 出囃子の長さが違うことはリハーサルでスタッフが説明していたが、M―1は人生をかけた大舞台。さや香とロングコートダディは舞い上がってしまったのか、そこまで気が回っていなかったようだ。井口は悪口キャラのイメージと違って、相方の河本太(38)が「こいつの真面目さが出た」と言うようにお笑いに真摯。スタッフの話をくみ取り、最大限の注意を払いつつ大一番に臨むことができた。

 順番も彼らに味方した。ファーストラウンドは10組中10番目。爆笑をさらった熱が冷めないまま、最終決戦のトップバッターでネタを披露した。しかも、どちらも「ありなしクイズ」を題材にした同じ構造の漫才。審査員や視聴者が「もっと見たい」と毒をおかわりしたいタイミングで、8分間のひと続きのネタかのように2本目を見せた。

 それに加えて、大きかったのが昨年のM―1王者・錦鯉の存在だった。井口によると、決勝前日に錦鯉と偶然仕事で一緒になった際、渡辺隆(44)に「ネタを変えようか悩んでいる」と相談したところ「おまえはバカか。おまえは全員をバカにしないと意味ないんだから思い切ってやれ」とハッパをかけられたという。

 これですべてが吹っ切れた。好感度をドブに捨てて、ありとあらゆるものに悪態をつく“悪口漫才”を貫くことができた。こんな、さまざまな幸運が重なったことによって、最高の幸運を引き寄せたと言える。

 家族のいる相方・河本のことを考えて、すべてのギャラを折半するなど素顔はナイスガイな井口。「営業妨害」と言われるかもしれないが、根底に「愛情」があるからこそキャラも立つ。

 2年前にM―1で言い放った「お笑いは今まで何もいいことがなかったヤツの復讐劇だ!」と叫んだフレーズにはゲラゲラ笑った。それがさらにパワーアップ。過剰なコンプライアンス重視の世の中に風穴を空けた1発は爽快感抜群。日本一の悪口漫才師のギリギリの綱渡りから目が離せそうもない。

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2022年12月24日のニュース