池田エライザ 「令和のドロンジョ」 すっぴん、ボクシング

[ 2022年10月14日 08:00 ]

ドラマ「DORONJO/ドロンジョ」で泥川七音(池田エライザ)がボクシングの練習をする場面(C)WOWOW
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 【牧 元一の孤人焦点】7日にスタートしたWOWOWのドラマ「DORONJO/ドロンジョ」(金曜後11・00)に主演する俳優の池田エライザ(26)はこの作品について「今を生きている人たちと距離が近い。生きづらさを感じている人たちがどこかスカッとするようなものになっていると思います」と語る。

 アニメ「タイムボカンシリーズ ヤッターマン」(1977年放送)のキャラクター・ドロンジョの過去を新たな視点で描いた作品。原作から考えれば、のちにドロンジョになる泥川七音(池田)が「悪」、のちにヤッターマン2号になる聖川愛花(山崎紘菜)、1号になる高岩田ガン(金子大地)が「善」だが、そう単純な構図の物語ではない。

 池田は「ドロンジョが生まれかねない今の世の中の物語だと思います。今はみんなで『これが正義だ』みたいなことを言い合っているような大変な世の中ですけど、ドロンジョみたいに、正義が自分のことを守ってくれない人たちも生まれて来ていると思うんです。そういう人たちが報われたらいいな、という気持ちでやりました」と話す。

 のちにドロンジョとなる七音は育ての親から厳しいボクシング指導を受けている。貧しく過酷な環境から抜け出すことを目指して、練習の合間にアルバイトで汗を流し、夜は自室ではなくジムのリングの上で寝る生活だ。

 「ドラマの前半は、過去にないほどスッピンで撮影しました。あそこで化粧っ気があると、見ている人が冷めちゃうと思ったんです。七音があの生活でファンデーションを塗っているわけがありませんから。あの期間は美白の概念を捨てて、スキンケアもやめて、本当に肌がガサガサしていました。いいのかな?と思いましたけど、まあいいんじゃないですかね。でも、あれがリアルと言われると、私はもうちょっとまし、と思いますけど(笑)」

 見どころの一つが、ボクシングシーンだ。第1話にも、愛花との激しい試合の場面があった。撮影が始まる約2カ月前からボクシングの練習を続けていたという。

 「練習は基礎の繰り返しでした。アッパーを100回とか、ジャブはジャブで納得できるまで続けるとか。自分のフォームを見て手の角度や足の重心を確認したり、戦う時に隙になるような悪いくせを直したり。七音はインファイター(相手に接近して戦う選手)なので、YouTubeでインファイターの試合の動画も見ました。撮影では、これ以上やったら体を痛めるというところまでやりました。アドレナリンが出ているから、周りに心配されても『まだ大丈夫』と言ってしまうんです。自分の限界にうそをつくと次の日に動けなくなるということを学びました(笑)。以前はボクシングを見たこともなかったんですけど、自分がやり始めて、こんなに面白い競技なのかと思いました。強さだけじゃなく、鍛錬された筋肉や動きの美しさも見どころになる競技だと思います」

 原作のアニメのドロンジョは悪党3人組・ドロンボー一味のボス。スタイル抜群の美女で、金銀財宝をこよなく愛し、部下のボヤッキー、トンズラーとともにドクロストーン獲得を狙うというキャラクターだった。

 その前日譚とも言える今作には、のちにボヤッキーになる飛悟(矢本悠馬)、トンズラーになる匠苑(一ノ瀬ワタル)も登場する。

 池田は「既存のドロンジョではなく、令和の新たなドロンジョが生まれます。若く、最終形態ではありません。この作品は前半が重く暗い展開ですけど、後半はドロンボーらしいワクワクする展開を楽しんでいただけると思います」と語る。

 役柄を演じきった手応えは十分のようだ。

 「七音のように、どんなに理不尽なことがあっても生きていこうとする人は尊い存在だと思いました。そういう人に俳優として私の体を貸すというのは実りある経験で、勉強になりましたし、私自身が助けられた部分もありました。みなさんに伝わることを願っています」

 新たな地平を開く「令和のドロンジョ」。その最終形態の物語もいつの日にか見たい。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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2022年10月14日のニュース