川栄李奈 フジ連ドラでヒロイン 「朝ドラで出していなかった一面を」

[ 2022年10月3日 08:00 ]

ドラマ「親愛なる僕へ殺意をこめて」でナミを演じる川栄李奈(C)フジテレビ
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 【牧 元一の孤人焦点】女優の川栄李奈(27)が5日にスタートするフジテレビの連続ドラマ「親愛なる僕へ殺意をこめて」(水曜後10・00)にヒロイン・ナミ役で出演する。

 連ドラ出演は、ヒロインを務めたNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」以来。インタビューに応じた川栄は「5カ月くらい空きました。短い作品を二つくらいやったので、ずっと休みだったわけではないですけど、お休みがありました。出掛けることもなく、ただただ休みました」と話す。

 「親愛なる僕へ殺意をこめて」は二重人格の大学生・エイジ(山田涼介)を主人公とするサスペンスで、ヒロインのナミは半グレ集団が運営するデートクラブで働く女性だ。

 「エイジと協力して事件の犯人を見つけだそうとします。個性豊かなキャラクターばかりなので、ナミがいちばん視聴者目線に近い役だと思います」

 クランクインは7月下旬だった。

 「真夏だったので『こんなにしんどかったっけ?』って思いました。朝ドラの時はほぼセットで、最近、外や炎天下でずっとロケしたことがなかったので、いかに自分が快適な環境で過ごしていたのかってことが分かりました。暑くてボーッとしてしまって『次は何だっけ?』って、セリフを言えなかったこともありました。でも、お芝居が好きなので、楽しいと思ったし、今回はほとんどロケなので体力がついてきた気がします」

 ヒロインとして出演シーン、セリフ量が多いが、それでも朝ドラのヒロインと比べれば少ない。

 「朝ドラの時は関西弁とか英語とか、話したことのないセリフが多かったので、ひたすら聞いて覚えてました。今回も出演シーンは多いですけど、朝ドラの時が尋常じゃなかったので、それを終えて現場に入ると、セリフ覚えが早いし、体力が余ってる気がします。やりたかったお仕事だから、きついけれど楽しめてる自分がいます」

 ナミは育った家庭環境が悪く、不遇の人生を送り、自己肯定感が低いという人物設定だ。

 「まっすぐで、いい子だけど、悪く言うと、ちょっと流されやすい。はつらつとした子ではなく、ほとんど笑わない。私は今まで、テンションが高い役、明るい役が多かったけれど、やってみて、こちらの方がやりやすいと思いました。声のトーンが全然高くなくて、素のテンションで演じられるので、頑張らなくても、すっと入れます」

 朝ドラのヒロイン・ひなたは明るいキャラクターだったので、正反対の役柄と言える。

 「朝ドラの時はテンションを上げてやってました。今回のドラマでは朝ドラで出していなかった一面を出すので、そういう意味でも、いろんな方に見ていただきたいと思います」

 朝ドラのヒロインを務めたことで後輩からあこがれられる存在になった。テレビ東京の連続ドラマ「北欧こじらせ日記」に主演するAKB48・本田仁美(20)は取材に「私もいつか川栄さんみたいに、どんな役にもなじんで演じられるようになりたい」と話している。

 川栄は「申し訳ないです」と恐縮しつつ、「私はAKBでセンターでもなかったし、ぎりぎり選抜みたいなメンバーでした。その時は落ち込みがちになったり、視野が狭くなったり、自分なんて…と思ったりもするじゃないですか?今のメンバーに『世界はそこだけじゃない』ってことを感じてもらえたらいいな、と思います」と話す。

 ここまで来るには、もちろん役者としての才能も必要だったが、地道な歩みも必要だった。

 「AKBにいた時から『見てる人は見てる』って思ってました。人間的な部分として、礼儀だったり…。お世話になる方々に良い印象を持ってもらうことが大切だと思います」

 その言葉を聞いて思い出したことがある。2015年に川栄が舞台「AZUMI 幕末編」に主演した時のことだ。舞台稽古の場でインタビューした際、全ての取材を終えて帰ろうとすると、既に稽古を再開していた川栄がわざわざ出入り口まで歩いて来て「ありがとうございました」と深く頭を下げた。そこまで礼儀正しい芸能人は珍しく、印象に残った。

 それから約7年が経過した。朝ドラのヒロインだけではなく、19年に「いだてん」、21年に「青天を衝け」とNHK大河ドラマに出演するなど役者として活躍が顕著。特に「青天を衝け」での徳川慶喜の正室役の評価は高く、慶喜役の草なぎ剛も「川栄さんがとても優しいまなざしでお芝居をされるので、吸い込まれるように2人の世界に入れた。包容力、芝居力があり、とても素敵だった」と称賛していた。

 「AKBを卒業してからずっと目標がありました。朝ドラと大河に出ること、映画で賞をとることです。これから、映画で賞をとれるような、お金を払ってでも見たいと思ってもらえるような人間になれるように頑張ろうと思います」

 残り一つの目標を実現させるために自らやるべきことも明確だ。

 「いろんな方と共演すること、いろんな方のお芝居を近くで見て感じることがいちばん大切だと思います」

 映画賞は一種の「記録」だが、既に「記憶」に残る役者になっている。朝ドラとは違う一面を見せる今回のドラマで視聴者に新たな記憶を深く刻みつけることになるだろう。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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