3季連続の社 激打の藤井は「最悪」想定し、落ち着いて自身初のサヨナラ打 聖地では最高の勝利を

[ 2023年7月28日 04:00 ]

第105回全国高校野球選手権兵庫大会決勝   社5-4明石商 ( 2023年7月27日    ほっともっと神戸 )

<第105回全国高校野球選手権兵庫大会 社・明石商>9回、サヨナラ打を放った社・藤井が喜びを爆発させる(撮影・岸 良祐)
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 第105回全国高校野球選手権(8月6日開幕、甲子園)の出場校を決める地方大会が27日に各地で開催された。兵庫大会決勝では社がサヨナラ勝ちで明石商を下し、2年連続2度目の優勝を飾った。同県決勝では5年ぶりとなる公立校対決だった中で、3季連続の甲子園出場を決めた。

 手に汗握る展開にもかかわらず、社の選手は地に足が着いていた。1点優勢の9回表に同点に追い付かれて迎えた攻撃。2死満塁の絶好機で、8番・藤井竜之介(3年)は、相手投手の得意球であるカットボールに狙いを定めた。カウント1―1からの3球目、その曲がり球に手を伸ばすと、中前にサヨナラ打が転がった。「これで甲子園に行けるんだと鳥肌が立ちました」。今春選抜準優勝の報徳学園など強豪私学がそろう全国屈指の激戦区で、公立校が3季連続の甲子園出場を決めた。

 選手が慌てず、冷静だった理由がある。社は試合前に約5分間の“イメトレ”を導入する。「最高」と「最悪」の両極の場面を思い浮かべるのが決まりだ。殊勲の藤井は「厳しい試合になる」と9回に相手の猛攻を受ける場面が頭の中に浮かんだ。だから息詰まる打席でも冷静に狙い球を絞れた。ただし、思い浮かんでいた最高の場面は仲間と喜ぶ絵だけ。「自分がサヨナラ打を打つことは想定していなかったです」。理想を超える人生初の劇打で甲子園を決めた。

 同校を14年から指揮する山本巧監督は「脱・体育会系」を掲げ、時代に即した指導法を取り入れてきた。その代表例が21年に導入したメンタルトレーニングだ。練習の一環として、座学などで精神面の管理を学んできた。決勝は専門のトレーナーが球場まで駆けつけた。その成果が、有力選手をそろえる私学勢の撃破につながった。

 昨夏の甲子園では県岐阜商との1回戦に勝利するも、コロナ禍に見舞われた相手を思い、笑顔を控えた。「甲子園で笑って終わりたいです」。藤井は、すでに聖地での最高の場面を思い浮かべている。 (河合 洋介)

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