「ボール・ストライクだけを見ていられない」 ルール変更がもたらした球審のアジャスト

[ 2023年4月15日 10:34 ]

ピッチクロックの残り時間を示す掲示板(AP)
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 スポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」のケン・ローゼンタール記者がメジャーリーグのダン・ベリーノ審判にインタビュー。新ルールが施行される中、審判の仕事がどう変わったかを14日(日本時間15日)に報じた。

 「球審にとって一番大変なのは、ストライクとボールをしっかりジャッジすること。精神的にも疲れる。だが今はボールだけを見ていられない。ボールを投げる投手を見て、打者が時間内にきちんと構えたか、クロックがきちんとリセットされているかも確認しないといけない。時計に注意を払わないといけない。我々はこれまでずっとボールを見ているように、常に胸をボールの方に向けているよう訓練されてきた。それが一番大きなチャレンジ。我々がこれまでトレーニングされてきたものとは全て違う」

 ハンドシグナルも新しいものが加わった。

 「打者がタイムを要求したら、誰がタイムを要求したか、はっきりわかるようにシグナルを出す。そしてクロックを再びスタートさせる。それにはまだ慣れない。打者はその打席の中でタイムは1回だけだし、投手は塁上に走者がいる時、その打席で投球板を2回までしか外せない。それを使ってしまうと、その後は敵にアドバンテージを与えてしまう。審判として投手と打者の戦いをいかに公平に保つか気を配る。打者の振る舞いも変わった。あっという間に(カウント)0-2に追い込まれたら、大概、タイムを要求してくる。球審もそれを予測できるようになった。我々も選手と協調して動きたい。なるべくピッチクロック違反は出したくない」

 微妙な判断。「先日起きたが、けん制で一塁にスライディングで戻ってベルトが切れたというので、時計を止めた。コンタクトレンズを失ったとか、そういったトラブルには常識で判断したい。一方で頭の良い選手もいて、ルールの抜け道を見つけ出そうとする者もいる。そこには微妙な境界線がある。良くなったのは、ニューヨークのリプレーセンターや、球場のフィールドタイミングコーディネイターとイヤフォンでいつもコミュニケーションを取れること。毎日のように何か新しい事態が起きる。先日はフィールドに鳩が下りてきて、時計を止めた。私たちは時計を止めたときはリーグにその理由を説明する。そして分類していく。別の球場で働く19の審判クルーが、同じ頭の中身でいられるようにしないといけない」。

 新ルールは野球にとっていいことか。「スタンドのファンは以前のように、試合中にアイフォンを見ていない。投手がボールをどんどん投げるし、気が散ることもなく試合を見ている。これまでよりずっといい。一方で捕手、打者、審判のホームベース上の絡みは減った。これまでなら、「元気?」とか声を掛け合うし、打者と捕手が絡んでいた。でも時計があるから、話している時間はない。この変化は予測していなかった」と話している。

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2023年4月15日のニュース