【内田雅也の追球】零敗の後いかに切り替えられるか「再出発」期待の姿勢

[ 2022年6月9日 08:00 ]

交流戦   阪神0ー1ソフトバンク ( 2022年6月8日    ペイペイD )

<ソ・神>6回、阪神・近本(奥)は東浜相手に投ゴロに倒れる(撮影・大森 寛明)
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 福岡ペイペイドームの記者席は空調がよくきいており、風が通り抜ける。かなり肌寒かった。

 阪神打線も寒かった。今季14度目の零敗、7度目の0―1敗戦である。

 結果は寒いのだが、内容は熱かったと記しておく。よく食い下がった。

 今季ノーヒッターも達成した東浜の武器は鋭く沈むシンカーだ。ツーシームの縫い目でスプリッターのように人さし指と中指をやや開いて握る。亜大出身の投手が多用し俗に「亜大ツーシーム」「亜細亜ボール」と呼ばれる。もとは東浜が亜大後輩の九里亜蓮(広島)らに伝えた球らしい。

 プロ野球データの収集・統計を行うジャパンベースボールデータ(JBD)の「翼」には球種別ランキングがある。シンカーの「ゴロ率」をみると、セ・パ規定投球回数到達の投手で、東浜がトップの70%を記録していた=数字は7日現在=。被打率は・164。球速も140キロ台中盤で速球と見分けがつかずに沈むため、打球が上がらず、安打になりづらいのだ。

 阪神打線はこのシンカーに食らいついた。3回表2死の島田海吏は実に11球、5回表先頭の糸井嘉男は9球粘った。最後はやはりシンカーに内野ゴロに打ち取られた。

 悔しかったのは近本光司だろう。2安打を放ち、安打数でセ・リーグ単独最多となったが、シンカーには手を焼いた。

 1回表1死二塁の先制機。フルカウントからシンカーを芯でとらえライナー性飛球を放ったが、左翼正面とツキがなかった。6回表1死一塁では2ボール0ストライクから高めに“来た!”とフルスイングしたが、鋭く沈んでボテボテ投ゴロとなった。さすがは球界随一のゴロボールである。

 4回表2死一、二塁では糸原健斗がそのシンカーを右前打したが、二塁走者の近本が本塁憤死したのだった。

 6月初黒星である。連勝もいつかは止まる。そして大山悠輔もいつも打てるわけではない。「がっくりは野球に付き物だ。問題はその後だ」と大リーグ監督通算勝利数で歴代2位のトニー・ラルーサが語っている。

 零敗の後、いかに切り替えられるか。これまでとは違った再出発ができるか。全員で食い下がる今の姿勢ならば、大丈夫ではないかとみている。 =敬称略=
 (編集委員)

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