12年越しついに実現 「奇跡の一本松球場」でのプロ野球

[ 2022年6月9日 08:30 ]

イースタンリーグの試合が行われた陸前高田市の「楽天イーグルス奇跡の一本松球場」(高田松原球場)
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 プロ野球公式戦が岩手県陸前高田市で、ついに実現した。4日に同市の「楽天イーグルス奇跡の一本松球場」(高田松原球場)でイースタン・リーグの楽天―巨人戦が行われた。当初予定されていた11年から東日本大震災と新型コロナウイルスの影響で2度の延期を経て同球場では初めて開催されたプロ野球。地元の人たちは観戦を心から楽しんでいた。

 今年の3月上旬に東日本大震災関連の取材で足を運んだ場所でもあり、縁あって試合当日の取材も担当できた。かつて、より沿岸にあった旧高田松原球場は津波で流され、「奇跡の一本松」から北東に約1キロ離れた場所に再建されたのが現在の球場だ。

 前日の夜まで雨が降っていたというが、当日は12年越しのプロ野球公式戦初開催を歓迎するかのように晴れ渡った。球場の再建に建設部長兼都市計画課長として携わった阿部勝氏(62)は「ここは元々は住宅街で、お祭りなんかも行われていました。市民の協力がないと(開催は)できなかった。こうやって人が集う場所になってうれしいですね」と感慨に浸った。

 多くの小中学生の野球チームもスタンドに詰めかけた。高田第一中軟式野球部3年の三嶋惺太郎さん(14)は頻繁にプロ野球をテレビ観戦しているというが「テレビで見るよりも面白い」と生観戦に刺激を受けた様子。球場の外ではキャッチボールを楽しむ小学生の姿も見られ、記者の心もほっこりとした。

 試合は楽天が惜しくも敗れたが、詰めかけたファンからは終始、温かい声援が送られた。三木肇2軍監督(45)は「選手たちも気持ち良く青空の下でプレーできたんじゃないかなと思う。自然の中にあるこういう球場から、たくさんの子どもプロ野球を目指して頑張るということにつながっていけばいいと思う。素晴らしい球場ですね」と語った。

 震災による津波で甚大な被害を受けた陸前高田市での試合は東北の完全復興に向け、大きな意味を持つ1試合になったはず。野球というスポーツをきっかけに、この地がもっと元気になっていくことを願ってやまない。(記者コラム・田中 健人)

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2022年6月9日のニュース