エンゼルス・大谷の「二刀流」理解者去る…開幕前から「死に体」だったマドン監督

[ 2022年6月9日 02:30 ]

解任が発表されたエンゼルス・マドン監督(撮影・篠原 岳夫)
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 エンゼルスは7日(日本時間8日)、ジョー・マドン監督(68)の解任を発表した。20年から指揮を執り、常識にとらわれない采配で大谷翔平投手(27)の二刀流を後押ししてきたが、今季は6日に同一シーズンの球団ワースト記録に並ぶ12連敗を喫していた。フィル・ネビン三塁ベースコーチ(51)が監督代行に就任したが、連敗は13に伸びた。最大の理解者がチームを去った大谷への影響と解任劇の舞台裏に迫る。

 この日朝、ペリー・ミナシアンGMはアート・モレノ・オーナーから「マドン解任」の承諾を得た。そしてマドン監督の自宅に足を運び、通達した。前日に球団ワースト記録に並ぶ12連敗を喫したとはいえ、その時点で借金は2で、地区2位。しかし、開幕前から「マドン監督はもう死に体だった」と指摘する声がある。

 チーム内での求心力低下だ。実は昨オフ、指揮官のある失言が波紋を呼んだ。球団は故障で長期離脱した主砲トラウトの負担を軽減するため、中堅から左翼か右翼へのコンバートを検討。ところが、本人に打診する前にサービス精神旺盛なマドン監督が記者に口を滑らせてしまった。トラウトは「ツイッターで知った」と不快感を隠さなかった。結局、トラウトへの敬意からプランは白紙になった。

 USAトゥデーの看板記者ボブ・ナイチンゲール氏は「GMは昨オフの時点で、バック・ショーウォルター(現メッツ監督)に代える考えがあった」と報じた。さらに昨季途中に解雇された、もう一人のスーパースター、プホルス(現カージナルス)が「マドンでは勝てない」とGMに忠告し、複数のベテラン選手がプホルスに感謝していたとも伝えた。

 マドン監督はレイズ時代、外野手4人の守備隊形など、データを重視した革命的な戦術で球界に新風を吹き込み、16年にはカブスを108年ぶりの世界一に導いた。しかし、「最近はデータに支配されすぎる」と話すなど、感覚に頼る采配も増えていた。4月15日のレンジャーズ戦では満塁から申告敬遠の奇策。データの裏付けがないと、フロントとの亀裂も深まっていた。

 ただ、大谷の二刀流にはプラスに作用していた。球団の医療スタッフは18年の入団以降、科学的データに基づき、休養を取らせてきたが、昨季、マドン監督が大谷に「体調はどう?」とテキストメッセージでの確認だけで起用を決めた。その結果、歴史的なシーズンにつながったが、チームとしては2年連続地区4位に沈んだ。

 契約最終年だったマドン監督は春先に来季以降の契約延長を求めたが、ミナシアンGMは応じなかった。「プレーオフ進出」が契約延長の唯一の条件だった。4月は好調で事態は好転するかと思われたが、12連敗でフロントとの関係も修復不可能に。シーズン前から大きな「爆弾」を抱え、解任の決断に時間はかからなかった。

 ≪マドン監督「楽しく野球できなくなった」≫突然の解任となったマドン監督は米メディアの取材に「とても驚いている」と心境を吐露。「私に聞くこともなかった」と球団側から事前の相談がなかったことに不満をにじませ「最近はフロントオフィスに支配されすぎている。楽しく野球をすることができなくなった」とも語った。過去に最優秀監督賞に3度も輝いた68歳の名将は「監督を(再び)やりたいか?」と問われると「もちろんやりたい」と答えた。

 ◇ジョー・マドン 1954年2月8日生まれ、米ペンシルベニア州出身の68歳。現役時代はエンゼルスのマイナーで捕手としてプレーもメジャー昇格できずに引退。06年にデビルレイズ(現レイズ)監督に就任し、08年にワールドシリーズ進出。16年にはカブスを108年ぶりの世界一に導いた。カ軍は19年限りで退任し、20年からエ軍監督。08、11、15年に最優秀監督賞を受賞。監督通算成績は1382勝1216敗1分け、勝率・532。

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