ファンを愛するビッグボスが見せた“命懸け”の空中遊泳

[ 2022年4月23日 08:30 ]

日本ハム・新庄監督
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 ヘルメットを脱いだその表情に、命懸けのファンサービスの覚悟を感じた。日本ハムの本拠開幕戦となった3月29日の西武戦前のセレモニー。新庄監督が7770万円のホバーバイクで登場する「世界初」のパフォーマンスを実行した。

 リハーサルでは動きの確認のみで試乗はせずにぶっつけ本番だった。飛行中は「ずっと目をつぶっていた」という高所恐怖症の指揮官がやった、決死のパフォーマンス。上限50%の入場が目安の札幌ドームでコロナ下最多となった2万868人のファンが沸いた。

 「あれくらいやらないと楽しさは出ない」と命綱なし、ヘルメットのみで約8~9メートルを自動運転で空中遊泳。中堅付近に着地し、フルフェースのヘルメットを脱いだ顔はいつもの表情ではない。緊張でこわばっていた。ただ事ではないと感じ取った。

 後日、自ら舞台裏を明かした。「ここ(内股でバイクを挟んで)を固定、ここ(両手グリップ)は強く握っておく。これを緩めたら駄目っていう契約書があった。ちょっと緩めたら、ぶわーって(揺れて)やばい」。さらに自動運転の遠隔操作は屋外であれば問題ないが、2万人の観衆の中で行った前例はなし。電波が途切れる可能性もあり、コントローラーを持った操縦者がなるべく近い距離を維持するため、暗転したドーム内でバイクの下を追って操作していたという。

 「落ちた瞬間にどっちに飛ぼうかな。骨折くらいだったらいいかな」とまで考えていたほど。普段は自分の言葉でスラスラ話す指揮官が、通常の精神状態ではないと珍しくカンペまで用意した。「(セリフが)ぶっ飛ぶと思ったからカンペつけたもん。そしたら案の定(2022年を)“2020年”って(読み間違えた)。それくらい嫌いなんですよ、高いところ。マジで。でも喜んでもらえるなら」。ファンは宝物。その言葉の裏側には相当な決意があると再認識させられたパフォーマンスだった。(記者コラム)

 ◇東尾 洋樹(ひがしお・ひろき)和歌山県出身の39歳。智弁和歌山時代は3年春、夏に甲子園準優勝、優勝を経験。立大でも硬式野球部に所属。東京本社でサッカー、野球担当などを経て18年から日本ハム担当。

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2022年4月23日のニュース